質問⑪財産隠しの可能性が高い夫に対してどのようにすれば財産を保全できますか?


ご相談内容

離婚の調停に関していくつか質問があります。

離婚の調停を申し立てようと思っています。

悩む女性のイメージイラスト40年前に親の強力な勧めで見合い結婚しましたが、結婚当初よりモラルハラスメントに苦しみ、体を壊したため、15年後に2人の子供(当時13歳と10歳)を連れて別居してから25年になります。

現在私は65歳(専業主婦)、夫は70歳(メガバンクの支店長を経て、退職し10年)です。

お金を支払うイメージ画像同居中から、年収等一切知らされることがなく、生活費も毎月必要最小限の決まった額を渡されるだけでしたので、何かと私の両親が援助してくれ、生活費の足りない分をそれで補っていました。

別居の始まった年から3年は生活費の援助が一切なく、私の両親に説得してもらい、それから12年間は援助を受けていました。しかしその後、夫が60歳で退職した時に援助が一方的に打ち切られ、今に至る10年間は援助がありません。

ところが6年前、社保庁で私の年金手続きの際に、夫に扶養している配偶者がいる場合に貰うことのできる配偶者加給年金を、夫が62歳の時から支給されていたことがわかりました。

この時に、夫に加給金を請求し、約3年分を送金してもらいましたが、その後いくら請求しても無言のままです。

最近になって、婚姻費用分担や、離婚によって年金分割・財産分与を請求できるということがわかり、離婚の調停を申し立てすることにしました。

お金を隠す男性のイメージ画像夫が財産隠しをする可能性が非常に高いので、まず財産の保全処分をしたく思います。

しかし「離婚調停前の仮処分」では執行力が無く、従わなくても10万円以下の過料が科せられるのみなので、執行力のある方法を知りたいのです。

『調停の段階で、「審判前の保全処分」の申し立てが可能』という記述を、ある弁護士のサイトで見ました。これは民事保全法による「仮差押え・仮処分」と同じ意味でしょうか?

悩む女性のイメージイラストこれは強制力があるとのことなので、この方法を取りたいのですが、調停前置主義との関係がよく分かりません。どのように手続きを取ったらよいのでしょうか?

別居後3ヶ月間は厚生年金に加入していた時期もあり、合計して約4年間はパートで働いていた時期もありましたが、私も体が丈夫ではなく、今現在はわずかな年金と、親の援助で暮らしている状態なので、生活が非常に困窮しています。

35歳になる娘と生活していますが、娘も病弱で収入がありません。

取り敢えず加給金だけでも送金してほしいのですが、無言の夫に対して何とか払ってもらう方法はないでしょうか?もしこれが不可能であれば、調停の場で、財産分与にこれを含めて請求できますか?

マイホームのイメージイラスト夫は30年前神奈川県に建てた土地付き一戸建てに一人で住んでおり、これを含めて、かなりの資産があると予想できます。できれば全財産の半分が欲しいのですが、それは請求可能でしょうか?また、企業年金の分与も請求できますか?

申立書に財産分与の希望額を書く欄がありますが、退職金・財産等、全額で夫がどれ程持っているのかは全く分かりません。どのように請求金額を書けばよいのでしょうか?

どうぞよろしく御回答お願い致します。

 

ご回答

相談者様

婚姻費用や財産分与に関するご質問ですね。今回は弁護士の西村が回答いたします。

まず、調停で離婚の話合いをするにも時間がかかります。相談者の方は、今現在相手方から1円ももらっていないということですが、別居していても、相手方には婚姻費用の分担義務がありますので、速やかに婚姻費用の請求ないし調停を行った方がよいでしょう。

婚姻費用は、双方の現在の収入から算定表を用いて適正額を判断します。相手方の現在の収入がわからないという相談者の方の場合には、「相当額を支払え」として、相手方に請求することになります。

財産分与に関しては、財産分与の基準時として、現時点を基準とするという場合と別居時を基準とするという場合とがあり、この点について、過去の裁判例も別れています。

相談者の方のお話ですと、15年以上前に別居されて生計も別になったとのことですので、別居時の財産を基準として分与することになる可能性が高いと思います。

したがって、相談者の方は現時点での全財産について、半分することを希望されているようですが、実際に半分を獲得することは難しいでしょう。ただし、これまでの婚姻費用を10年間支払ってもらっていないということなので、その未払分を財産分与として清算の対象にすることはできます。

財産の保全処分としては、3つ方法が考えられます。

説明する男性のイメージイラスト一つが、相談者の方も言及されている調停前の仮処分で、これは調停委員会が職権で行う仮処分ですが、調停の申立てを行った申立人が職権発動を促すことはできます。ただち、強制力がありませんので、実効性はあまりないでしょう。

説明する男性のイメージイラスト二つ目が、審判前の保全処分です。この処分には、調停前の仮処分と異なり、強制力がありますので実効性は確保できます。

しかし、これは審判を申し立てるのと同時に行う必要がありますので、財産分与の審判を申し立てる必要がありますが、相談者の方はいまだ離婚が成立していませんので、次の民事保全手続を利用することになると思います。

民事保全手続は、財産処分を当面の間禁止する仮差押えを行い、相手方が財産を処分するのを防ぐことになります。

この場合、①離婚原因があること(被保全権利)、②仮差押えをする必要性があること(保全の必要性)を疎明する必要があります。疎明とは、裁判のように証明までしなくてもよいが、ある程度客観的な資料をもとに裁判所が納得できる程度に説明をしなければならないということです。

具体的には、相手方が不動産を売ろうとしているといった事実を明らかにしなければなりません。そして、仮差押えには、保証金(担保)が必要になります。

こうしたことからすれば、相談者の方がご自分で仮差押えをすることは非常に困難だと思います。

年金分割のイメージ画像年金分割については、婚姻期間中、双方が払っていた厚生年金の報酬比例部分を分割するというもので、相談者の方のように婚姻期間が長い場合には、0.5の割合で分割すれば、受け取る年金額に大きく影響します。

年金分割は、年金分割のための情報通知書を取得する必要があります。お近くの年金事務所で取得されてください。なお、この年金分割については、企業年金は対象となりません。

今回のケースで、ご自分で調停をされるのは、財産分与などで複雑な問題があり、非常に大変だと思います。一度、弁護士にご相談していただければと思います。

 

 



離婚にまつわるトラブルのQ&A