離婚の公正証書について


公正証書とは

執務中のイメージイラスト公正証書とは、公証人が公証人法・民法などの法律に従って作成する公文書のことです。

公証人というのは、法務大臣が任命する公務員であり、全国各地の公証役場において、ある事実の存在等について、証明・認証することを業務としている人達です。

 

 

公正証書は必要か

説明する男性のイメージイラスト和解が成立する場合、その合意内容を公正証書にすべきか否かというご質問をよく受けます。

公正証書は、公文書ですから高い証明力があります。また、公正証書の条項に強制執行受諾文言を入れておくと、債務者が金銭債務の支払を怠った場合に、裁判所の判決などを待たないで直ちに強制執行手続きに移ることができます。

すなわち、金銭の貸借や養育費の支払など金銭の支払を内容とする契約の場合、債務者が支払をしないときには、裁判を起して裁判所の判決等を得なければ強制執行をすることができませんが、公正証書を作成しておけば、すぐ、執行手続きに入ることができます。

このようなメリットからすると、公正証書は作成したほうが得策であるかのような気がします。

しかし、公正証書を作成する場合、公証役場に対して、手数料を支払わなければなりません。この手数料は、合意内容によって変わってきますが、数万円を要する場合がほとんどです。

弁護士宮﨑晃画像また、弁護士を代理人としていない場合、ご自分で公証役場に行って相手方と顔を合わせなければなりません。

このようなデメリットが有るため、公正証書を作成するメリットがないようなケースについては、むしろ作成しないほうが得策です。

では、どのような場合に公正証書を作成したほうがよいか、具体例でご説明します。

 

公正証書の作成を検討すべき事案

養育費を受け取る場合

合意内容に養育費の取り決めがある場合、公正証書の作成を検討すべきです。

例えば、「平成◯年◯月から未成年者が満20歳に達するまで、月額◯万円の支払い義務があることを認める」というような合意を締結する場合、基本的には公正証書を作成したほうがよいでしょう。

養育費のイメージ画像このように将来にわたって、継続的に金銭が支払われていく場合、万一、相手方が支払わなくなった場合、裁判等を起こすことなく強制執行手続きに入ることができるからです。

この強制執行というのは、わかりやすくいえば、相手方の財産(給与債権や不動産など)を差し押さえる等の手続をいいます。

例えば、相手方が養育費を支払わなくなった場合、相手方がサラリーマンであれば、その給与を差し押さえて、相手方の会社から直接養育費を支払ってもらうことができます。

慰謝料を分割払いで受け取る場合

b8fdd4c2b162391ffb45d8a240abcac6_s相手方から慰謝料を支払ってもらうとの約束をしたものの、相手方に支払能力がなく、長期の分割払いとする場合、公正証書の作成を検討すべきです。

なお、この場合の合意内容としては、例えば、「◯◯は△△に対して離婚慰謝料として金300万円の支払い義務があることを認め、これを分割して平成◯年◯月から平成◯年◯月までの間、毎月末日限り、金5万円を△△の指定する口座に振り込む方法により支払う。」というものです。

年金分割を協議で行う場合

夫婦の一方がお一人で年金事務所にて年金分割手続を行う場合は、夫婦双方が年金分割に合意したことおよび分割の割合(按分割合)を記した「合意書」が必要となります。

年金分割のイメージ画像また、協議離婚の場合、この「合意書」は、公証役場で公証人から認証を受けたものでなければなりません。

したがって、調停や訴訟ではなく、協議離婚の方法で年金分割を行う場合、公証役場を通すのが通常といえます。

なお、夫婦お二人が揃って年金事務所で手続が可能な場合、公証役場で合意書の認証を受ける必要はありません。

 

弁護士が協議離婚合意書を作成していない場合

上記①から③の場合以外でも、素人の方が協議離婚の合意書を作成するのはおすすめできません。

専門的知識がないまま合意書を作成すると、法的に有効なものでなく、無効となる場合があるからです。

また、有効であったとしても、不利益を被る場合もあります。したがって、弁護士に合意書作成をご依頼されない場合でも、専門家に確認してもらう等はされた方がよろしいかと思います。

 

 

夫側は公正証書を作成するメリットがない?

上記のように、公正証書の作成を検討すべきなのは。継続的な金銭給付を受ける場合や年金分割を受ける場合が多いといえます。

多くの事案では、妻がこれらの給付等を受ける側です。このことから、通常の場合、夫側は公正証書を作成するメリットはないといえます。

しかし、例えば、妻が不貞行為を行い、離婚慰謝料として長期の分割払いで支払ってもらうような場合は、夫側も公正証書作成を検討すべきです。

 

 

公正証書に対する誤った認識

驚く男性のイメージ離婚の相談者の方から質問を受けていて感じるのは、「公正証書を作成さえしておけば、金銭債務の履行が確実である」と誤解されている方が多いということです。

確かに、公正証書は、相手方が金銭債務を履行しない場合、裁判所で判決等をもらわなくても強制執行ができるというメリットがあります。

しかし、これは強制執行できる対象となる財産がある場合です。

困る男性のイメージイラスト例えば、相手方の給与を差し押さえる場合、相手方が働いていない場合や働いていても会社名がわからない場合は差し押さえが不可能です。

また、相手方が不動産を持っている場合、不動産に対して強制執行を行なうことができますが、不動産を持っていない場合や持っていてもオーバーローンのときは、やはり債権回収は絵に描いた餅となります。

したがって、公正証書を作成していても、100パーセント履行してもらえるわけではありません。

説明する男性のイメージイラストでは、公正証書は、意味が無いものかというと、そうではありません。

公正証書を作成する上で、大きな意味があるのは、相手方に対する心理的な強制力だと思います。

すなわち、素人が作成した私文書と異なり、公証役場において、公証人の面前で公正証書を締結するということは、義務者にとって「合意内容を守らなければ大変なことになる」というプレッシャーを与える効果があります。

e72001241f07a3b9254583c491b3004d_sしたがって、合意を反故にして、債務不履行になる可能性が低くなります。そのため、公正証書の作成は、事案によっては積極的に検討すべきといえます。

公正証書については、代理交渉の経験豊富な弁護士へまずはご相談ください。

>> ご相談の流れについては、こちらをご覧ください。