弁護士コラム② ハーグ条約


外国人の子供のイメージ画像平成25年3月15日、政府は、国際結婚が破綻した夫婦間で、子どもの奪い合いが起きたときのルールについて定めたハーグ条約の批准へ向け、条約承認案及び関連法案をそれぞれ閣議決定し、国会へ提出した、とのニュースが流れました。

これらの法案は、5月にも国会で承認、成立する見通しとのことです。

ハーグ条約とは、国際結婚が破綻した後、一方の親が、16歳未満の子どもを、無断でもともと子どもが居住していた国から国外へ連れ去った場合、子どもを元の居住国に返還させるための条約です。

連れ去られた側の親が返還を求めると、加盟国は、その子どもの現在の所在を調べるとともに元の居住国に返す義務を負うことになります。

我が国においては、返還要請があった場合には、外務省が子どもの所在を調べた後、相手方国で行われた連れ去りの原因についての調査結果をふまえ、東京地方裁判所もしくは大阪地方裁判所が、最終的に子どもの返還の要否を決定することとなります。

外国人の親子のイメージ画像ハーグ条約の批准によるメリットとしては、外国人配偶者によって、日本国外に子どもを連れ去られてしまった場合、子どもの所在を自力で探す必要がなくなるという点があげられます。

海外に連れ去られた子どもを探しだすのは大変な労力が伴います。そのため、今までは連れ去られた側の親が泣き寝入りを余儀なくされることも少なくありませんでした。

このような「子どもを連れ去った方が有利」という現状が変わるのは、条約を批准することで得られる大きなメリットだといえます。

その一方で、外国人配偶者のDVや薬物乱用に耐え兼ね、日本に子どもを連れて逃げ帰ってきたケースでも問題が出てくる可能性があります。

外国人配偶者が子どもの返還を求めた場合、相手国において十分な調査がなされず、DVや薬物乱用の事実が認められないという調査結果がでれば、裁判所は子どもの返還を認めてしまう可能性があるのです。

ただし、ハーグ条約には、①連れ去りから1年以上経過、②子どもを返せば身体的、精神的に重大な危険が及ぶと判断されるケースでは、返還を拒否できるという条項もあります。
相手国の調査によっては②の事情なしとの結果が出ていても、明らかに事情ありと判断される場合には、日本が独自で返還を拒否できる仕組みをつくっておくことが重要でしょう。
また、子どもを返還しなくてよいとなった場合にも、離婚後の親権、面会交流の考え方の違いによる影響が出てくる可能性があります。

外国人の親子のイメージ画像日本では、離婚後は一方の親のみが親権者となる「単独親権」となりますが、ハーグ条約承認国の多くは、離婚後も両親が共同して子どもの親権者となる「共同親権」という制度です。

そのため、日本においては親権者でない親と子どもの関わり方は限定的ですが、諸外国においては関わり方が密であるため、頻繁な面会交流を要求されるなど、新たな紛争が起こることも考えられるのです。

ハーグ条約は、子の福祉にとって返還と返還拒否のいずれの対応が適しているのか、という観点で運用がなされる必要があることから、承認後にトラブルが起こった時にどのように対応をするかという観点から、多角的に検討したうえでの批准が必要といえます。

政府がハーグ条約批准にあたりどのような措置を講じるのか、私たちは注視していく必要があるでしょう。


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