DV夫と離婚できる?【弁護士が事例で徹底解説】

相手方がDV加害者の場合、当事者だけでは冷静な話し合いができず、協議による解決が難しい傾向にあります。

デイライト法律事務所の離婚事件チームには、このような「DVと離婚」に関するご相談が多く寄せられています。

DV夫と離婚できるかについて、実際の相談事例を基に解説いたしますのでご参考にされてください。

 

DVが問題となった相談事例

ご相談者 モラルハラスメントと暴力に悩む(32歳・専業主婦)

はじめまして。モラルハラスメントに詳しい弁護士さんがいらっしゃる事を知り、メールをしています。宜しくお願い致します。

私は、32歳、専業主婦です。夫は会社員です。年収は680万程です。今年の4月で結婚5年目に入りました。

仲のいい時は、出かけたり、優しいときもあり幸せを感じることもあります。

しかし、モラルハラスメントと暴力があります。

私は母子家庭で育っており、離婚したくなくて頑張ってきたつもりです。

交際した期間を合わせると、6年ほど一緒にいることになます。そのうち結婚前に半年ほど同棲していました。

結婚前から、軽い暴力、頭をたたく、突き飛ばすがありました。

暴力は、私は気が強いので向かって行ったりやり返したり毎日戦争のようでした。

しかし、やり返した私も悪いんだから、兄弟げんかのようなものであろうと、もやもやした気持ちをずっと抱えながら過ごし、夫は優しい所があり、仕事もよくするし浮気もしないだろうことから愛情があり結婚をしました。

しかし、暴力は収まらず、ひどくなるばかり。私のやり返しもすごくなるばかりでボロボロでした。

ケンカの原因をたどると、話し合いが全くできず、いつもそらされ寝てしまう。

泣いていてもお構いなしです。

いつも私が言うことを否定したり、頻繁にウソをつき、自分の思いどおりにならないと切れ、束縛したり、男だから、女だからといった理由で強制してきたり、避妊をしてくれなかったり、愛情を求めたりすると怒り侮辱し、別れると言ったり指輪を捨てると暴力をふるったり部屋を出ていかせないように突き飛ばしたり、家の中で布団に火をつけたこともありました。

頭がおかしくなりそうになり私が半狂乱になって泣いたり暴れてしまうと、お前がすべてめちゃくちゃにしている、俺は何も悪くない、全部お前がさせているお前はおかしい、俺が被害者だ・・と言われてきました。

うまくやりたくてネットで調べ、いろんな努力をしてきました。

文句を言われることは何でも努力しました。料理、洗濯、掃除、料理はブログに写真が残っています。

夫がパソコンを殴って壊したことで逆上し、夫にけがをさせてしまったこともあります。別件で私がけがをしたこともあります。

気力がなくなり、寝込んでしまい、心療内科に通ったり、家事をさぼってしまったこともあります。今も薬を飲んでいます。

ずっと、何年も自分も悪いからと悩んできたんですが、これはモラルハラスメントで間違いないという出来事が最近あり離婚したいと強く思うようになりました。

夫は結婚5年目なのに誰にも私を紹介してくれず、義理の両親や兄弟も私には無関心です。

暴力の相談などをしても、ほとんど取り合ってくれないし、相談をした時、俺の家族に迷惑をかけるなと言われたこともあります。

私が離婚に望むことは、結婚してからの150万強ほどの貯金、結婚してから購入した車、家具、生命保険、年金などの財産分与と離婚してくれること今後一切かかわらないでもらうこと、危害を加えないことです。

慰謝料は要りません。

夫から別れても一生付きまとってやると言われたことがあります。

あと、義理の父が旦那のような性格をしていて頭がいいので怖いです。

最近は旦那も離婚に同意しているときがあり、旦那には離婚することや、財産分与のことなどメモに書いてサインをしてもらったりはしていますがケンカの中のことで、雑に書いたものであり有効なのかわかりません。

旦那は話が二転三転するので離婚してくれるかわかりません。専門家の方の力をお借りしたいです。

暴言はボイスレコーダーに録音してあるものもありますが、決定的なものが少なかったり、旦那も録音していることを気づいていて余りいいものがとれていません。でも、常識はずれないいがかりなどは入っています。

日記はありませんが、知恵袋という相談サイトに複数相談しています。私がログインできるので私が書いたという本人確認はできるものもあります。

離婚して新しい生活を取り戻したいです。長々申し訳ありません。離婚はできるでしょうか?財産分与はできるでしょうか?

 

 

弁護士の回答

相談者様

メールでのご相談ありがとうございます。DV・モラルハラスメントについてのご相談ですね。回答させていただきます。

離婚については、大きく分けると3種類の方法があります。

①協議離婚

まず、①協議離婚です。

これは当事者間の話し合いにより、離婚の合意をし、離婚届を役場に提出して受理されることで成立する離婚です。

日本の離婚の約9割近くはこの協議離婚によるものです。

相談者の方も相手方が離婚に同意をしてくれればこの方法により離婚することが可能です。

その際には、条件面について合意書を取り交わすことが後のトラブルを防止するために重要になってきます。

 

②離婚調停

調停次に、②調停離婚です。

これは家庭裁判所の調停手続を利用しての離婚ですが、①と同じく、当事者の合意が前提です。

つまり、家庭裁判所において当事者間で話し合いを行うということになります。

離婚調停についてはこちらのページで詳しく解説していますので、ぜひ御覧ください。

 

③離婚裁判

3つ目が③裁判離婚です。

これは、家庭裁判所で離婚訴訟を行うことにより離婚する方法です。

裁判離婚では、離婚原因があれば、相手方が仮に離婚に応じていない場合でも離婚することができます。

離婚原因については、民法770条に規定されています。

相談者の方が悩んでいらっしゃる相手方のモラルハラスメントは、第5号の「その他婚姻を継続しがたい重大な事由があるとき」に該当します。

相談者のお話ですと、「男だから」、「女だから」という理由でいろいろと強要されたりしているとのことですが、こうした性別を理由とした暴言や強要は十分モラルハラスメントに該当します。

離婚裁判についてはこちらのページで詳しく解説していますので、ぜひ御覧ください。

 

 

今回の相談者について

上記のとおり、裁判での離婚が認められる可能性は十分あると思います。

もちろん、今回の相談者の方のケースで、裁判での離婚が認められるかどうかは、暴言の内容や頻度、相手方のモラルハラスメントにより相談者の方が受けた精神的被害、婚姻関係に与えた影響などの様々な事情によります。

相談者の方は、これまでの暴言を録音してあるとのことですが、具体的な暴言の内容等の事実を直接お話しいただければ、より具体的なアドバイスができると思います。

弁護士宮崎また、裁判になれば、相談者の方が相手方のモラルハラスメントを証明しなければなりませんので、今後も相手方からの暴言等は録音や日記により証拠化しておくとよいでしょう。

モラルハラスメントは、その人の気質によるところが大きく、相手方にはモラルハラスメントの認識がないことが多いので、いつかは変わってくれるだろうと思っても、なかなか改善することはありません。

相談者の方が新しい生活を始めたいということであれば、離婚前に別居するのがよいと思います。

もちろん、別居するとなると今後の生活面で不安だと思いますが、別居しても離婚するまでは、相手方には婚姻費用(生活費)を負担する義務がありますので、そうした請求をすることにより、当面の生活費を確保することは可能です。

また、相談者の方のお話ですと、相談者の方の求めに応じず、避妊をしてくれないということですが、これは性的暴力として、DVに該当しえ、離婚原因ともなります。

財産分与や年金分割は、離婚原因が何であれ、相手方に請求することが可能です。

実務上は、財産分与も年金分割もそれぞれ2分の1ずつで分割するというケースが多いです。

また、相手方のモラルハラスメントが原因で離婚ということになれば、慰謝料を請求することもできると思います。

相談者の方のお話ですと、相手方から財産分与などに関してメモを取っているとのことですが、これが有効であるかどうかは、実際にそのメモを見せていただかないと何ともいえません。

デイライト法律事務所ロゴ一度、当事務所にご相談いただいた際にお持ちいただければと思います。

今回の回答を参考にされて、一度当事務所までご相談ください。

 

 

補足

DVの事例で離婚できないとは?

上記の事例について、裁判において「離婚が認められる可能性は十分ある」と回答いたしました。

では、どのような場合に離婚が認められないのか。

離婚裁判において、裁判所から離婚判決をもらうためには、法定の「離婚原因」が必要となります。

「離婚原因」とは、裁判所が離婚判決を出すための要件のことであり、民法770条1項に5つの場合が記載されています。

離婚届離婚原因についての詳しい解説は、こちらのページを御覧ください。

離婚原因の中で、DV事案が該当する可能性があるのが「婚姻を継続し難い重大な事由」(民法770条1項5号)というものです。

「婚姻を継続し難い重大な事由」というものは、とても評価的な概念です。

DVモラハラすなわち、人によって重大か否か、その評価は多少の違いがあると思われます。

また、裁判官によっても、評価が分かれる可能性もあります。

したがって、明確に、「このようなDVであれば離婚判決は出ない」という断言はできません。

しかし、次のような場合は、裁判離婚が難しい傾向にあると考えられます。

身体的なDVがない

殴る、蹴る等の身体的な暴力の場合、診断書などからDVを立証しやすい傾向にあります。

また、怪我の程度が重い場合、悪質なDVがあったと考えられるので、「婚姻を継続し難い重大な事由」があるといえます。

逆に、身体的な暴力がないケースでは、DVの立証が難しい場合があるため離婚判決がでない可能性があります。

軽微なDVであること

身体的な暴力があっても、体を押さえる、突き飛ばすなどの軽微な暴力の場合、怪我が生じません。

そのような軽微な暴力の場合、「婚姻を継続し難い重大な事由」とまではいえず、離婚が棄却される可能性があります。

ただし、軽微な暴力であっても、日常的に繰り返されていれば、離婚判決が出る可能性があります。

DVと破綻との関連性が低い場合

結婚生活において、暴力行為はあったものの、その暴力が何年も前のもので、その後、夫婦として平穏に生活しているような場合、DV行為と夫婦関係破綻との因果関係がないため、離婚判決が出ない可能性があります。

被害者側に有責性がある場合

例えば、DVの被害者側に浮気・不倫などがあった場合、有責配偶者と認定される可能性があります。

DVの内容が重大でなく、被害者の有責性の方が大きいと判断されると、離婚判決が出ない可能性があります。

有責配偶者からの離婚請求の問題点については、こちらのページを御覧ください。

 

DVを理由とする離婚で慰謝料は請求できる?

慰謝料DV加害者に対して、離婚慰謝料を請求できる可能性があります。

例えば、暴力によって、怪我を負い、病院に入通院しているようなケースです。

暴力の程度が酷い場合、不法行為が成立し、当該暴力自体の慰謝料請求も可能ですが、離婚を求める場合、離婚慰謝料として請求することがあります。

もっとも、暴力の程度が軽微な場合、慰謝料の請求は難しい傾向です。

 

 

DV離婚のポイント

上記のような問題点を踏まえて、DV離婚のポイントについて解説します。

POINT① 協議による解決を目指す

DVの事案は、DVが重大であり、かつ、立証も確実な場合でなければ、離婚原因、すなわち、「婚姻を継続し難い重大な事由」が認められず、離婚請求が棄却される可能性があります。

また、仮に離婚裁判で勝訴が確実だったとしても、離婚判決が出るまでには一般に長期間を要する傾向にあります。

そのため、できるだけ離婚裁判は回避して、協議による解決を目指す方がよいでしょう。

POINT② 専門家に入ってもらう

離婚協議を目指すとしても、当事者同士では冷静な話し合いができない場合があります。

また、相手がDV加害者のケースでは、被害者の多くは相手に対する恐怖心から対等な協議が困難な状況です。

そのため、当事者同士での協議が難しい場合、離婚を専門とする弁護士などの第三者に間に入ってもらうことを検討しましょう。

POINT③ 別居を検討する

DV事案においては、まずは加害者との距離を置くことが重要です。

特に、生命・身体に対する危険が想定される事案においては、一刻も早い別居を検討した方がよいでしょう。

別居すると、「生活できないのでは?」と心配される方もいらっしゃいます。

しかし、加害者の方よりも収入が低い場合、婚姻費用といって、生活費を請求できる場合があります。

別居中ではあっても、配偶者は他方に対して生活保持義務を負っているので、適切な額の婚姻費用を支払う法的義務があります。

婚姻費用については、こちらのページを御覧ください。

また、仮にDVの立証が難しい事案でも、別居期間が長期化すると、それだけで「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当する場合があります。

その意味でも、離婚を希望される方は早期の別居を検討すべきでしょう。

 

 

まとめ

DVの離婚問題は、離婚原因の有無が問題となります。

また、DVを理由とする慰謝料請求についても、DVの程度や損害の算定が必要となります。

離婚原因の有無や慰謝料請求、その他の財産給付を判断するためには、専門的知識や経験が必要となります。

そのため、DVでお困りの方は離婚問題に精通した弁護士に相談されることをお勧めしています。

ご相談の流れはこちらからどうぞ。

 

 


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