財産分与をどうするか

財産分与についてお悩みの方へ

財産分与とは

財産分与とは、離婚する際に、夫婦が結婚生活の中で協力して築き上げた財産を公平に分配することをいいます。

基本的には、離婚する前に取り決めることになります。離婚後でも請求することは可能ですが、期間制限(原則として2年間)がありますので注意が必要です。

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ここでは、財産分与について、適切な見通しを立ててもらうために、以下のポイントについて解説しています。

財産分与でもっとも大切なことは、対象となる財産を洗い出すということです。

相手方の財産も分からいまま、相手方の言いなりとなって損をしてしまうケースは多くあります。

例えば、下記の例では、妻が夫の財産が不明なまま、養育費のみ取り決めをして財産分与については触れずに協議離婚をしてしまっています。

この場合、妻は本来得られたはずの財産を取得できないことになります。

事例

妻Bさんは、夫と20年前に結婚し、子ども二人がいました。

Bさんは、現在、会社員として働いており年収は約300万円、夫は会社員であり年収は1000万円を超えていました。

夫は自ら財産を管理しており、給与が振り込まれる口座も自分で管理していました。そして、生活費として毎月10万円をBさんに渡していました。

Bさんは、日頃から夫のDVに悩んでいました。また、些細なことで喧嘩となることが度々ありました。

Bさんは、子どもたちがある程度の年齢になったとことから、夫との離婚を決意しました。

そして、子どもたちを連れて別居するとともに、夫に離婚を求めました。

夫も離婚に応じたため、Bさんは夫に財産分与を求め、夫が管理している財産の開示を求めました。

ところが、夫が開示した預貯金の残高はわずか数万円しかありませんでした。

Bさんは、夫の給与からすれば、少なくとも数百万円の財産があるはずだと主張しましたが、夫は他に財産など存在しないと言い張り、逆にBさんの預貯金や生命保険等の財産分与を求めてきました。

そこで、Bさんは弁護士を通じて離婚調停を申し立てました。そして、裁判所を通じて、再度、財産開示を求めましたが、夫からはめぼしい財産は開示されませんでした。

結局、Bさんは、夫から財産分与を受けることはできず、逆に自分が夫に財産を分与することとなりました。

31da9e3caff6404497f53a6b0cce66a8_s財産分与とは、婚姻している期間に築いてきた夫婦の財産を分割する制度です。夫婦の預貯金や生命保険などが対象となります。

例えば、Bさんの財産が総額200万円、夫の財産が総額800万円の場合、対象財産は1000万円となります。

200万円(B名義財産)+ 800万円(夫名義財産)= 1000万円

この場合、Bさんは基本的には2分の1である500万円を取得できますので、夫から300万円の財産分与を受けることができます。

500万円(取得し得る財産)-  200万円(B名義財産)= 300万円。

しかし、夫が財産はないと言い張った場合、Bさんは夫に財産があることを立証しなければなりません。

すなわち、財産分与においても、財産があることの立証責任は、請求するBさん側にあります。

裁判では、相手方に財産の開示を求めることはできますが、強制力はありませんし、相手方が財産を隠して嘘をついた場合、立証ができません。

また、銀行等の金融機関に対して、裁判所を通じて取引履歴を開示させる方法もありますが、これは銀行名と支店名が判明していなければできません。

そして、この立証ができない場合、裁判所は夫に財産があることを認定してくれません。上記の例では、Bさんは逆に夫に100万円を支払うことになります。

200万円(B名義財産)+ 0円(夫名義財産)= 200万円
200万円 ÷ 2 = 100万円

このようなことから、財産分与においては、同居中に、よく観察して財産内容を把握し、その裏付けとなる資料を収集しておく必要があるのです。

 

 

対象財産の調べ方

財産分与の対象財産としては、不動産、預貯金、有価証券、保険、自動車、退職金などがあげられます。

それぞれのポイントとしては次のとおりです。

 

不動産の調べ方

時価の算定 時価の算定

自宅などの不動産がある場合はその時価を算出します。

時価は、不動産業者などに頼み、査定書を作成してもらうことで算定が可能です。

なお、当事務所では、不動産業者と連携しておりますので、スピーディに時価の算定が可能です。

不動産の査定については、不動産鑑定士に依頼すると、より正確にかつ信用性のある査定が可能となります。

しかし、鑑定料が高額ですので、費用対効果を考えると通常は不動産業者の査定書で十分です。高額な物件で、査定がポイントとなるような場合にのみ、不動産鑑定士に依頼するとよいでしょう。

なお、固定資産税の納税通知書を見れば、不動産の評価額が記載されています。

この評価額は、課税のための評価額であって、財産分与のための評価額ではありません。

また、固定資産評価額は、時価よりもかなり低い場合が多いので、財産分与の算定資料としては参考程度に留めるべきでしょう。

 

住宅ローンの確認 住宅ローンの確認

離婚事案では、当事者の年齢が若いことが多く、ほとんどのケースでは住宅ローンなどが残っています。

ローンが残っている場合、不動産の評価は、時価からローンを控除して算出するのが家庭裁判所の実務です。

そこで、ローンの残高を調べておくことも必要です。具体的には、住宅ローンを組んだときの契約書や支払計画書、残高証明書などで確認できます。

 

預貯金の調べ方

預貯金については、基本的には通帳の残高を確認します。

このとき、通帳のコピーをとっておいた方が無難です。コピーするときは、現在の残高だけではなく、表紙から記帳されているすべてのページをコピーすることがポイントとなります。

後に通帳の履歴を見て、資産隠し等が発覚する場合もあるからです。

相手方が通帳を開示してくれない場合、弁護士会や裁判所を通じて銀行に対して取引履歴を開示してもらう方法があります。

また、相手方が資産隠し目的で預貯金を移動している疑いがある場合も、同様の方法で過去の取引履歴の開示が可能です。

過去の取引履歴については金融機関によって異なりますが、ほとんどの金融機関では10年前までは遡ることが可能です。

ただし、この弁護士会や裁判所を通じての開示請求は、金融機関名と支店名がわからないとできません。

そのため金融機関名と支店名についてはできるだけ調べておかれてください。

 

有価証券の調べ方

株式などの有価証券がある場合、その時価に調べます。

上場会社の株式 上場会社の株式

上場会社の株式については、経済新聞やインターネットなどで時価を調べることが可能です。

相手方が株式を持っているのかわからないという方も多くいらっしゃいます。

そのような場合、相手方の通帳を見ると、取引履歴から株式を持っていることが判明することもあります。

 

非上場会社の株式等 非上場会社の株式等

問題となるのは、非上場会社の株式や医療法人等の出資です。

実際に多いのは、夫が会社経営者であり、その会社の株式のほとんどを所有しているという場合です。

また、夫が医療法人の理事であり、出資しているという場合も典型です。

基本的には、これらの株式等も財産分与の対象と考えられますが、その評価が難しくなります。

このような場合、会社の財務諸表等の資料を揃え、複雑な方法で算出しなければならないので、公認会計士等に依頼して時価を算出することとなります。

大変な作業ですが、非上場会社の株式は、莫大な財産となる場合があります。そのため諦めずに、離婚専門の弁護士に相談されることをお勧めします。

なお、当事務所では、税理士資格を持つ弁護士が在籍しており、このような株価の評価も得意としております。

相手方が会社経営者や意思・医者の場合、株式等の評価は難しくなる傾向にあります。

 

保険の調べ方

生命保険や学資保険には、契約内容によって解約した場合に解約返戻金が発生するものがあります。

その場合には保険に財産的価値があると評価できるので、財産分与の対象となります。

保険については、まず、保険証券を確認します。

保険の種類によっては、保険証券に、契約時からの年数に応じた解約返戻金の額が記載されているものもあります。この場合、保険証券からおよその解約返戻金の見込額を算出することが可能です。

保険証券にそのような記載がない場合、解約返戻金の見込額の証明書を保険会社へ連絡して取り寄せることとなります。

保険会社の窓口に連絡して、解約返戻金の見込額の証明書を発行してほしいと伝えると、自宅まで郵送してくれるでしょう。

なお、学資保険については、子どものためのものという理由で、財産分与の対象とはならないと考えてられている方が多くいらっしゃいます。

しかし、将来の教育資金のための保険であり、仮に裁判等で争うと、財産分与の対象になると判断される可能性が高いです。

そのため、今後の見通しを立てるために、解約返戻金の見込額は調べておくべきです。

 

自動車の調べ方

時価の算定 時価の算定

自動車の場合も時価相当額が財産分与の対象となります。

自動車については、中古車業者やディーラー等に見積もりを出してもらう方法があります。また、インターネットで同じ車種、同じ年式の自動車の販売価格を調べるという方法もあります。

もっとも、自動車の場合、自宅ほどの価値がない場合がほとんどです。そのため、高級車ではない場合、あまり複雑化させないようにするため、時価を算定しないことの方が多い状況です。

 

ローン残高の確認 ローン残高の確認

不動産と同様に、自動車については、ローンで購入されている方が多くいらっしゃいます。

そのため、自動車についても、財産分与の対象とする場合は、時価から残ローンを控除して、評価額を算出します。

 

退職金の調べ方

退職金は、あくまで将来支給を受ける金銭であり、現時点では存在しないものですから、財産分与の対象として認められるか否かは一概にいえません。

しかし、退職金は、給与の後払い的な性格を有するものです。

そこで、裁判例には、退職金であっても、数年後に退職し、その時点での退職給付金の額が判明している場合、財産分与の対象となると判示しているものもあります。

また、家庭裁判所の実務上も、退職金の算出が可能な場合は、退職までかなりの期間があっても、財産分与の対象とする傾向にあります。

そこで、当事者が勤める会社に退職金制度がある場合、その証明資料を取り寄せることが必要となります。

具体的には、会社の証明書や退職金規定等になります。

なお、相手方が退職金規定を開示しないような場合、裁判所を通じて会社に提出してもらうという手続も可能です。

 

負債の調べ方

共同生活に必要な借金 共同生活に必要な借金

自分や相手方に住宅ローンなどの借金(消極財産)がある場合、基本的には財産(不動産の時価等の積極財産)から控除することになるので、その残額を調べておきます。

また、住宅ローン以外でも、例えば、不足している生活費を補うための借り入れや教育ローン、自動車ローンなどの場合でも、積極財産から控除することになります。

例えば、夫婦の財産が次の場合を例にとって考えてみましょう。

具体例

夫名義の財産:自宅(時価 1500万円)、預貯金( 100万円)、生命保険(解約返戻金の見込額 300万円)、住宅ローンの残高( 1000万円)、教育資金のための銀行からの借り入れ( 300万円)

妻名義の財産:預貯金( 100万円)


上記の例では、積極財産が 2000万円となります。

1500万円 + 100万円 + 300万円 + 100万円 = 2000万円

しかし、消極財産が 1300万円あります。
1000万円 + 200万円 = 1300万円

したがって、この分を差し引くと、財産分与の対象財産は 700万円となり、夫婦それぞれが取得できるのは、 350万円となります。  700万円 ÷2 = 350万円

 

共同生活とは関係ない借金 共同生活とは関係ない借金

上記の住宅ローン等の消極財産を積極財産から控除できるのは、夫婦や子どもの共同生活に必要な借金は、夫婦それぞれが連帯して責任を負うことが公平であると考えられているからです。

では、例えば上記の銀行からの借り入れの 300万円が、教育資金ではなく、夫がギャンブルのための借り入れたものである場合はどうでしょうか。

具体例 夫がギャンブルのための借り入れたものである場合

夫名義の財産:自宅(時価 1500万円)、預貯金( 100万円)、生命保険(解約返戻金の見込額 300万円)、住宅ローンの残高( 1000万円)、教育資金のための銀行からギャンブルのための借り入れ( 300万円)

妻名義の財産:預貯金( 100万円)


このような場合、共同生活に必要な借金ではなく、そのことで妻が連帯して責任を負うのは不当と言えます。

そのため、このような共同生活とは関係のない借金については、財産分与において、考慮されません。

したがって、積極財産から控除することなく、夫固有の借金として処理されます。

この例では、妻は 350万円ではなく、 500万円を取得できることになります。

2000万円 – 1000万円 = 1000万円
1000万円 ÷ 2 = 500万円

このような実務上の扱いから、借金がある場合、それが共同生活のために必要なものか否かを検討することがポイントとなります。

財産分与については、離婚問題に精通した弁護士にまずはご相談ください。

>> ご相談の流れについては、こちらをご覧ください。

 

 

財産分与の基礎知識

財産分与の対象とならない財産

婚姻前に蓄えた預貯金や結婚前に相続や贈与により得た財産、婚姻中に相続や贈与により取得した財産は、特有財産といって財産分与の対象となりません。

そのため、この特有財産の有無を調べて、対象財産から除外する必要があります。

例えば、夫名義の財産が合計 1500万円、妻名義の財産が合計 200万円あったとします。

具体例 夫名義の財産が合計 1500万円、妻名義の財産が合計 200万円の場合

夫名義の財産:1500万円

妻名義の財産:200万円


この事例で、夫が父から 500万円の贈与を受けていたとしましょう。この 500万円は、結婚生活とは無関係に形成された特有財産ですので、対象財産から除外します。

すると、対象財産は 1200万円( 1500万円 + 200万円 − 500万円)となります。

 

特有財産の具体例をあげておきますので、参考にされてください。

特有財産の具体例
  • 独身時代に貯めた預貯金、有価証券(名義が自分のもので、独身時代のものかどうか明確に区別できることが必要です)
  • 嫁入り道具、結婚前に購入した家具や家電製品
  • 結婚後に相続や贈与で得たお金、不動産や動産

 

財産分与のルール(2分の1ルール)

不動産や預貯金など、自分名義のものは離婚後も自分のものだと考えてしまいがちです。

しかし、どちらの名義であるかということだけで判断してしまうと、分与の割合が一方に偏ってしまうことも多く、公平な清算になりません。

基本的には、分与の割合は夫婦それぞれの財産形成に対する貢献度によって決まるという考え方が取られています。

ではどうやって貢献度を決めるのでしょうか。

現在の裁判実務は、夫婦が婚姻中に取得した財産は、原則として夫婦が協力して形成したのであり、形成についての貢献度は平等であるとしています。

したがって、夫婦は、婚姻後、形成した財産に対して相互に2分の1ルールの権利を有することになります。これを「2分の1ルール」といいます。

この2分の1ルールを上記の事例に適用すると、夫婦はそれぞれ 600万円( 1200万円 × 1/2)の権利を有していることになります。

妻は現在、 200万円しか自分名義の財産がないため、離婚に際しては、夫に 400万円の財産分与を請求できることになります。

 

分与の方法

上記において、共有財産が2分の1となるように、夫から妻へ 400万円を分与する場合、どのようにして分与すべきでしょうか。

話し合い

例えば、夫婦の財産がすべて預貯金の場合は、簡単です。夫から妻へ 400万円を渡すという方法(通常は送金します。)で分与が可能です。

しかし、財産が預貯金だけというのは少ないのが実情です。多くの事案では、不動産や保険、有価証券なども対象となっています。

このような場合は、相手方と協議し、最終的に 600万円ずつの財産を取得できるように調整します。

例えば、夫名義の対象財産 1000万円の内訳が、預貯金 500万円、生命保険(解約返戻金見込額)300万円、株式 100万円、自動車 100万円で、妻名義の対象財産 200万円の内訳が預貯金 150万円、生命保険(解約返戻金見込額)50万円であったとします。

具体例

夫名義の財産:1000万円
内訳:預貯金 500万円、生命保険(解約返戻金見込額)300万円、株式 100万円、自動車 100万円

妻名義の財産:200万円
内訳:預貯金 150万円、生命保険(解約返戻金見込額)50万円


妻が夫名義の自動車と残りは預貯金を希望し、夫もそれで応じる場合、夫から妻へ 300万円を送金し、自動車の名義を妻へ変更することで、最終的な財産分与の取得額が 600万円となります。

財産分与については、離婚問題に精通した弁護士にまずはご相談ください。

>> ご相談の流れについては、こちらをご覧ください。

 

 

財産分与の諸問題

ここでは、財産分与について、よく問題となる以下の点について解説しています。

離婚前に別居している場合

母子の淋しいイメージ画像離婚が成立する前に、すでに別居しているというケースは多くあります。

例えば、妻が子どもを連れて実家へ帰るような場合です。

別居期間が長くなると、その間に夫婦の財産が増えたり、減ったりすることがあります。この場合、いつの時点を基準として財産分与の対象財産を確定すべきかという問題があります。

この問題について、別居時という考え方と離婚時という考え方があります。

最高裁判所は、
民法768条3項の「一切の事情とは当該訴訟の口頭弁論終結時における当事者双方の財産状態の如きものを包含する趣旨」であり、口頭弁論終結時における当事者双方の財産状態を斟酌して分与を命じても違法ではないと判示したものがあります(最判昭34.2.19)。

この裁判例は、離婚時(口頭弁論終結時)に立つものですが、あくまでこの事案についての判断であり、財産分与の基準時についての統一的な基準を示したものではないと考えられています。

下級審においては、別居時という考え方に立つ裁判例と離婚時という考え方に立つ裁判例があり、個々の事案に応じて判断しています。

清算的財産分与制度(民法763条3項)の趣旨は、婚姻中に形成した財産を、夫婦双方の財産形成についての貢献度・寄与度を考慮し、公平に分配することにあります。

かかる趣旨からすれば、財産分与の基準時については、離婚時か別居時のいずれが正しいというものではなく、個別の事案に応じて判断すべきであると考えます。

多くの場合、基本的には、別居時と考えられますが、上記の例のように、別居していても、妻が子どもを養育している場合には、未だ協力関係にあると言え、離婚時と判断される可能性があります。

難しい問題であり、個々のケースごとに判断することとなりますが、現在の家裁実務は、通常は別居時としており、事案に応じて修正しているように感じます。

くわしくは、離婚問題に精通した弁護士にご相談されてください。

具体例 別居時に 300万円あった夫名義の預貯金を夫が浪費し、現在 100万円しか残っていない場合

現在、100万円しか残っていないとしても、300万円を対象財産とします。別居後は通常、夫婦の経済的な協力関係はないからです。
また、このケースでは夫が浪費しており、それを妻の負担とするのは不当です。
したがって、妻は夫に対し、300万円の2分の1である、150万円を請求できます。

財産分与については、離婚問題に精通した弁護士にまずはご相談ください。

 

財産分与の割合は常に2分の1か

例えば、会社の経営者で、個人の特殊な能力や努力によって高額の資産形成がなされたような場合にも、相手方の要求に応じ、財産の半分を渡さなければならないのでしょうか。

ba61c59bd16052cab689527e4637d0cb_sこのような場合、形式的に2分の1ルールを適用すると、かえって公平性を欠くといえます。

そもそも、財産分与とは、夫婦が婚姻中に協力して形成・維持してきた共同財産を、夫婦の貢献度に応じて、精算・分配するものです(精算的財産分与)。

したがって、上記のような事案では、2分の1ルールを適用すべきでありません。実際の裁判例においても、2分の1ルールを適用しなかった事例がありますので、ご紹介しておきます。

判例 夫が医療法人の理事長として医療施設を経営し、多額の資産(総額約 1億円の財産)を有していた事案

「夫が多額の資産を有するに至ったのは、妻の協力もさることながら、夫の医師ないし病院経営者としての手腕・能力によるところが大きい」と認定し、2分の1を基準とせず、
妻に 2000万円(約5分の1)の支払を命じた。

【福岡高裁昭44.12.24】

>> 会社社長に特有の離婚問題については、こちらをご覧ください。

>> 医者に特有の離婚問題については、こちらをご覧ください。

 

住宅ローンがある場合

住宅ローンが残っている場合、財産分与は複雑となります。この場合に特に問題となる点を解説します。

まず、評価については、時価から残ローンを控除して算出します。

具体例をあげて説明しましょう。

家と車のイラスト具体例

自宅:夫名義(住宅ローンも夫名義)
時価:2000万円
残ローン:1000万円
他の財産:なし


上記の事例では、自宅の評価は 1000万円となります。

この場合、仮に『夫が自宅を取得する場合妻は夫から 500万円の分与を受けることとなります。

2000万円 − 1000万円 = 1000万円
1000万円 × 1/2 = 500万円

ここでポイントとなるのは、時価を適切に評価するということです。

上記の事例で、もし『時価が 1500万円の場合』夫から妻への財産分与は 250万円となります。

1500万円 – 1000万円 = 500万円
500万円 × 1/2 = 250万円

反対に、もし『時価が 2500万円の場合』夫から妻への財産分与は 750万円となります。

2500万円 – 1000万円 = 1500万円
1500万円 × 1/2 = 750万円

なぜこのようなことが問題となるのか。

それは自宅の時価の算定が難しいからです。物件にもよりますが、不動産相場は流動的です。

また、相手方が自分に有利に時価を算定することもあります。というのは、不動産業者がある程度は依頼者の希望に沿った価格で査定することがあるからです。

上記の例いえば、妻が自宅の時価を高く査定すれば妻側に有利となりますし、夫が自宅の時価を低く査定すれば夫側に有利となります。

ac76d8f70cc3404b711e90346e04c406_sこのように、不動産が実際の価格と異なる査定された場合、不利益を被るので、適正に査定することが大切なポイントとなります。

なお、当事務所では、不動産を査定することが多いため、不動産業者と連携しており、依頼者が不利益を被らないように適正かつ迅速に査定を行うように努めています。

不動産の名義について

登記簿のイメージイラスト不動産の財産分与は、当該不動産の所有権をどうするかという問題です。

例えば、夫が妻へ自宅を財産分与する場合、自宅の所有権を妻のものにすることです。この所有権は権利であって目には見えません。

そこで、取引の安全の観点から第3者にも明確にするために、不動産については、所有者が誰であるかなどの情報を法務局で登記することとなっています。

そして、この登記情報は誰でも法務局で確認することができるようになっています。

離婚の財産分与でも、登記できる状態であれば、登記をすべきです。

例えば、夫が妻へ自宅を財産分与した場合、妻はそれを法務局へ届出て登記をします。

そうしないと、万一、夫が第3者に自宅を売却し、名義変更をした場合、妻はその第3者に自分が所有者であることを主張できないおそれがあるからです。

なお、自宅などの不動産は、夫名義の場合が多いです。夫名義の場合で夫が自宅を取得する場合は、名義変更は不要です。

不動産の名義変更で注意が必要なのは、住宅ローンが残っている場合、債権者である銀行等の承諾がなければ名義変更ができない場合が多いということです。

したがって、このような場合、夫との合意(離婚協議書)の中で、住宅ローンを返済後、直ちに名義変更をするという内容の条項を設けておくべきです。

なお、銀行等によっては、残ローンがある場合に名義変更は認めなくても仮登記を認めてくれる場合もあります。

これは本登記をするための要件がそなわっていない場合に、将来の本登記の順位保全のため、あらかじめする登記のことです。

この方法が可能であれば、仮登記をしておくということを検討されてもよいと思います。

 

 

分与方法の問題

自宅などの不動産の財産分与は、大別して次の3つの方法が考えられます。そこでこの3つの場合の問題点と名義変更について解説します。

夫が自宅を取得の場合

男性夫が自宅を取得する場合、不動産の精算はそれほど問題ありません。

先ほどの例で説明すると、不動産の時価が残ローンを上回っていれば、その上回っている分が不動産の評価額であり、夫は妻に対して、その額の2分の1を分与すればよいことになります。

残ローンが不動産の時価を上回っている場合(これをオーバーローンといいます。)、妻の財産分与請求権は発生しません。そして、今後の残ローンについては、不動産を取得する夫が負担することになります。

なお、20代から30代くらいまでの夫婦の離婚の場合、ほとんどのケースがオーバーローンの状態です。

日本では、莫大な住宅ローンを組んで自宅を購入する夫婦が多いこと、また、近年不動産は価格が上昇せずに建物の劣化とともに急激に価値が減少することが要因となっています。

 

妻が自宅を取得の場合

女性妻が自宅を取得する場合も精算方法は夫と同じです。

すなわち、財産が自宅のみの場合で自宅の時価が残ローンを上回っている場合、評価額の2分の1を夫に分与し、残ローンが自宅の時価を上回っている場合、夫の財産分与請求権はありません。

また、離婚後の残ローンも妻が負担すべきです。

妻が自宅を取得する上で特段の考慮を必要とするのは、住宅ローンの債務者が夫名義である場合(日本ではこのケースが圧倒的に多いです。)、離婚しても、銀行に対する返済義務者は夫のままであるということです。

すなわち、夫婦の離婚の問題と銀行等の債権者に対する問題はまったく別なのです。

このような場合、夫から妻に債務者の変更を銀行が認めてくれればよいのですが、通常は認めてくれません。夫婦のうち、収入が多い方が債務者である方が債権回収の可能性が高いので、妻にも相当の収入があるなどの事情がないかぎり、債務者の変更は基本的に認めてくれないのです。

したがって、このような場合、銀行等に対する返済義務者は夫のままにしておき、妻が夫に毎月の住宅ローンを支払うなどの約束をして自宅の所有権を分与してもらうなどの方法が考えられます。

しかし、日本の家庭では、妻の多くは専業主婦であったり、就労していてもパートタイマーであったりなど、収入が低いケースが多い状況です。

このような現状からすると、不動産の時価が残ローンを上回る場合に妻が評価額の半分を夫に支払うのは難しいケースが多いです。また、妻が残ローンを支払っていくことも簡単ではありません。このような場合、話し合いが可能であれば柔軟な解決もありえます。

例えば、夫が強く離婚を希望しており、妻側が逆に消極的な場合、2分の1ルールではなく、夫側に負担を大きくしてもらうなどです。具体的には、妻が自宅を取得し、夫に評価額の半分を諦めてもらったり、残ローンを支払ってもらったりする方法が考えられます。

また、このような話し合いができない場合、夫が自宅を取得し、妻には離婚後、賃貸や使用貸借(無償で自宅を使わせること)という方法で住まわせることもあります。

 

売却の場合

お金自宅を売却する場合、財産分与の方法は売却代金を2人で分ければよいのでそれほど複雑ではありません。

問題となるのは、そもそも売却できるかということです。離婚ではオーバーローンの物件が多い状況です。当事務所で取り扱う事案で、半分以上はオーバーローンの状態です。

このようなケースでは、自宅を売却する際、債権者である銀行等の承諾が必要です。すなわち、前述したように、銀行等の債権者にとって最も重要な事は債権の回収可能性です。

そこで、住宅ローンを組むとき、不動産に抵当権を設定します。

そして、貸付の際、契約書には、この担保価値を既存するおそれがあるような行為(自宅の売却などの処分)については承諾しないかぎり認めない旨の条項が記載されています。

そして、実際に銀行等は簡単には承諾してくれません。そこで、オーバーローンの物件については、銀行等との交渉が必要となってきます。

この交渉には専門知識とノウハウが必要なため、当事務所は、オーバーローンの物件の売却を数多く扱う不動産業者と連携しています。

 

 

財産分与の問題点

財産分与については、以下の4つの問題があります。

 

対象財産を正確に把握できない 対象財産を正確に把握できない
上述したように、財産分与においては、対象財産を洗い出すことが重要です。

しかし、対象となる財産が何かよくわからない、調査できない、という問題があります。

相手方が財産を隠すことはよくあります。このような場合、財産分与に精通した離婚専門の弁護士でなければ調査は難しいと考えられます。

また、特有財産については、上述したように、財産分与の対象から外れますが、これらについても、素人の方は、どうやって証明すればよいのかわからない、という問題があります。

評価が難しい 評価が難しい
対象となる財産が正確にわかったとしても、次に、それを適切に評価するのが難しいと考えられます。

評価しなければならないのは、不動産、株式、退職金、保険、貴金属などの動産などです。

例えば、不動産については、固定資産評価額を「財産分与の基準」としなければならないと考える方もいますが、これは誤解です。

固定資産評価額は、あくまで課税の局面での評価額であり、財産分与における評価額は「時価」と考えるべきです。

通常、時価のほうが固定資産評価額よりも高額なので、固定資産評価額で財産分与を考えると、適切な額とはなりません。

冷静な話ができない 冷静な話ができない
財産分与については、双方とも財産を誠実に開示し、冷静に協議する必要があります。

しかし、離婚を決意した当事者は、相手方に対して、不信感、怒り、恐怖心などの悪感情を持っている場合がほとんどです。

そのため、財産分与についても、疑心暗鬼となって、資産を開示しなかったり、開示されていても資産隠しを疑うなど、冷静に協議することが難しいことがあります。

調停や裁判は時間・労力がかかる 調停や裁判は時間・労力がかかる
当事者同士での話し合いが難しい場合、家裁に離婚調停を申立てるという方法も考えられます。

しかし、調停は、とても時間がかかります。ケースにもよりますが、通常半年から1年程度は見ていた方がよいかと思われます。

調停が不成立となって離婚裁判となった場合、さらに1年以上の期間を要すると思われます。

特に、財産分与でもめると、財産開示等に時間がかかるため、解決まで長年月を費やすおそれもあります。

「早く解放されたいのになかなか解決できない」という状況が続くと、当事者には多大な負担となります。

 

 

プロの離婚弁護士はここが違う!当事務所の財産分与解決サポート

財産分与は、離婚条件の財産給付の中で、もっとも大きな金額となる傾向にあるため、重要なポイントとなります。

当事務所の離婚事件チームは、財産分与に関して以下の解決サポートを提供しています。

 

門チームによる相談対応

対象となる財産を調査し、適切に評価するためには、財産分与の専門知識が必要です。また、家裁での手続が想定されることから、実務についての経験・ノウハウも必要となります。

当事務所では、「弁護士の専門特化」を事務所の第1の行動指針としております。

弁護士は、幅広く何でも対応するというスタンスでは、質の高いリーガルサービスを提供できないと考えているからです。

離婚相談については、離婚問題に注力する弁護士のみで構成される「離婚事件チーム」が対応させていただいております。

財産分与に精通した離婚弁護士が、相談者の具体的な状況に照らして、どのように財産を調査すべきか、また、財産分与としてどの程度の額が見込めるか等について、助言いたします。

 

手方の財産を開示させる

弁護士宮崎晃財産分与においては、対象財産を洗い出すことがスタートとなります。

当事務所では、離婚問題をスムーズに解決するために、ご依頼を受けると、すぐに相手方に財産開示を求めます。

開示に消極的な相手でも、弁護士名で開示要求を行うことで、開示に応じてくれる可能性があります。

また、開示しない場合は、法的手続を取ることで、相手の財産を調査することも可能です。

このようにして、相手方の財産の内容を正確に把握することができます。

 

産分与の適切な金額を知ることができる

対象財産が預貯金だけであれば、財産の評価は不要です。

しかし、対象財産の中に、不動産、株式等の出資、貴金属等の高価な動産、ゴルフ会員権、生命保険などがあると、それらを時価評価しなければなりません。

これらについて、適切に評価できるのは、財産分与に精通した離婚弁護士です。

また、当事務所は、不動産業者と連携しており、全国の物件を迅速に時価査定することができます。

さらに、当事務所の離婚事件チームには、税理士資格を有した弁護士が所属しております。そこで、非上場株式の評価等もサポートしています。

これによって、財産分与の適切な金額を知ることができます。

 

議での解決の可能性がある

弁護士本村安宏

当事者同士での協議が難しい場合、当事務所では、弁護士が依頼者の代わりに相手方と直接交渉する手法(当事務所では、この手法を「代理交渉」と呼んでいます。)を提案しています。

プロの弁護士が相手方と交渉しますので、冷静に協議してくれる可能性があります。

また、法律的な主張は弁護士の方が説得的に伝えることができるので、適切な条件での協議が成立する可能性があります。

 

調停や裁判まで対応できる

相手方が不誠実な対応を取るなどして、協議が難しい場合、弁護士にご依頼されておけば、離婚調停や離婚裁判までもサポートできます。

「最初から最後まで、すべてを任せられる」というのは大きな安心感といえるでしょう。

 

デイライト法律事務所ロゴ財産分与は夫婦の財産を公平に分けるための大切な制度です。

まずは当事務所までお気軽にご相談ください。

 

 

「財産分与」についてよくある相談Q&A

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