慰謝料とは?【離婚問題に詳しい弁護士が解説】

執筆者:弁護士宮崎晃

慰謝料とは?

夫婦喧嘩慰謝料とは、精神的な苦痛を被った場合に加害者に対して請求する金銭をいいます。

例えば、離婚問題ですと、配偶者が浮気・不倫相手と不貞行為を行ったり、配偶者からDVを受けた場合などが典型です。

配偶者が不倫・浮気をすると、通常の人は深く悲しみ、心が傷つきます。

慰謝料とは、そのような損害を金銭に換算し、加害者に対して賠償を求めるものです。

また、DVの場合も同様に、精神的な苦痛に対して請求できるものです。

なお、DVの場合は怪我の治療費なども賠償請求の可能性がありますが、これは財産的損害であって、精神的損害の慰謝料とは区別されています。

慰謝料については、主として次の役割があると考えられます。

慰謝料の役割

填補としての役割:被害者が被った精神的損害を填補する役割

制裁的な役割:加害者に金銭を支払わせて制裁を課す役割

満足的な役割:被害者の精神的苦痛を緩和し満足させる役割

 

 

 

浮気・不倫の慰謝料はいくら?

お金結婚している男女や交際している男女間での慰謝料請求の裁判は、近年、増加傾向にあります。

もっとも、慰謝料は、上記のとおり、精神的な苦痛を金銭に換算するものです。

また、浮気・不倫の内容や当事者がおかれた状況も様々です。

そのため、裁判例においても、慰謝料は定額ではなく、かなりの幅があります。

具体的には、低額な案件だと数十万円から高額な案件だと1000万円を超える事案もあります。

もっとも、裁判例としては200万円〜300万円程度が多いようです。

また、300万円を超えるのは、裁判ではなく、示談交渉で解決する場合がほとんどです。

したがって、離婚慰謝料の一応の目安としては200万円〜300万円程となるでしょう。

なお、当事務所の実際の慰謝料の解決事例として、一例をご紹介します。

上記のとおり、慰謝料は数十万円のものもあれば、1000万円のものまで幅広く存在します。

 

 

慰謝料の考慮要素とは

夫婦喧嘩浮気・不倫の慰謝料の場合、一般的には、①結婚している期間の長短、②支払い側の資力、③有責性、④未成年の子の有無等があげられています。

特に裁判の場合は、①結婚している期間の長短は大きな要素と考えられます。

もっとも、示談交渉の場合、執筆者の個人的な感覚としては②支払い側の資力と、もう一つの要素として⑤交渉力(パワーバランス)が重要だと感じています。

例えば、不倫した夫が妻に積極的に離婚を求めている事案の場合、妻側は交渉力が強い場合が多いです。

このような事案で、夫側に経済的な余裕があれば高額な慰謝料を請求できる可能性があります。

 

 

どんな場合に請求できる?

浮気・不倫の慰謝料は、配偶者が他者と不貞している場合に発生します。

ところが、不貞と一概に言っても様々な状況が考えられます。

例えば、風俗に行っただけである、デートをしたが肉体関係までなかった、などの状況です。

そこで、どのような場合に慰謝料を請求できるのかが問題となります。

慰謝料は、法律に基づき発生するものであり、不法行為に基づく損害賠償請求権です。

そして、不法行為が成立するためには、「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した」ことが要件となります(民法709条)。

裁判例にあらわれた事案の多くは、肉体関係を伴い、かつ、それがある程度継続している場合です。

しかし、肉体関係がない(またはそれが証明されない)場合について、慰謝料を認めた事案もあります(東京高判昭47.11.30など)。

以下、不貞について問題となる事例についてご紹介いたします。

メールのやり取りで慰謝料を払わなければならない?

メールのやり取りは肉体関係などないので、基本的に不貞行為となりません。

ただし、裁判例の中には慰謝料を認めた事案もあります。

判例慰謝料を認めた事案 認容額30万円 東京地判平24.11.28

「逢いたい」「大好きだよ」等のメールについて、「被告が原告に行為を抱いており、原告が知らないままA(不貞相手)と会っていることを示唆するばかりか、被告とAが身体的な接触を持っているような印象を与えるものであり、これを原告が読んだ場合、原告らの婚姻生活の平穏を害するようなものというべきである」として、不法行為の成立を認めました。

なお、メールのやり取りに関する判例についての詳しい解説はこちらをご覧ください。

 

デートは慰謝料を払わなければならない?

異性と一緒に映画や食事をしたりすることは、肉体関係ではないので、基本的に不貞行為となりません。

ただし、裁判例の中には、不貞の認定はしなかったものの慰謝料を認めた事案もあります。

判例慰謝料を認めた事案 認容額80万円 東京地判平25.4.19

この事案は、かつての不貞相手と深夜の時間帯に面会していたというもので、裁判所は「被告がAと再び不貞関係を再開したのではないかとの疑いを抱かせるのに十分な行為であり、原告とAの婚姻関係を破綻に至らせる蓋然性のある行為であると認められるから、かかる被告の行為は,原告に対する不法行為に該当するものと認めるのが相当」であると判示しました。

なお、この判例についての詳しい解説はこちらをご覧ください。

 

性的不能の場合は慰謝料を払わなければならない?

病気などで勃起できないなどの性的不能のケースでも、ホテルで一夜を過ごしたり、性交類似行為(姦通行為には至らない性交渉)がある場合、慰謝料を認めた事案があります。

判例 慰謝料を認めた事案 認容額150万円※ 東京地判平25.5.14

※150万円程度の損害の発生を認めたが、共同不法行為者からすでに500万円の支払いを受けたいたため請求自体は棄却。
「確かに、Aは持病の糖尿病のため性的不能であったから(前記1(5))、Aと被告との間に性交がなかったことは認められる。
しかしながら、Aと被告が性交に至らなかったとしても、Aと被告との間には、前記1(5)及び(7)に認定した行為が認められ、かかる行為は、Aの配偶者である原告の婚姻共同生活の平和の維持という権利又は法的保護に値する利益を侵害するものと認められる。」

 

クラブのママの枕営業は慰謝料を払わなければならない?

クラブのママやホステスが優良顧客に対して、いわゆる「枕営業」を行った場合、肉体関係があるため不貞行為に該当すると考えられます。

しかし、裁判例は、次のとおり、不法行為には当たらないと判示しました。

判例東京地判平26.4.14

「クラブのママないしホステスが、顧客と性交渉を反復・継続したとしても、それが「枕営業」であると認められる場合には、売春婦の場合と同様に、顧客の性欲処理に商売として応じたに過ぎず、何ら婚姻共同生活の平和を害するものではないから、そのことを知った妻が精神的苦痛を受けたとしても、当該妻に対する関係で、不法行為を構成するものではないと解するのが相当である。」

 

慰謝料請求についてのまとめ

以上から、慰謝料が認められる事案について、裁判例は、必ずしも性交渉があった場合に限定はしていません。

ただし、性交渉がない事案においては、当該行為によって婚姻生活の平和の維持という権利又は法的保護に値する利益が侵害するに足る行為(性交類似行為)がなければ慰謝料の支払いは認められない傾向です。

また、一見性交渉がある場合でも、加害者に違法性を阻却できるような事情があれば不法行為の成立が認められない可能性があるといえます。

 

 

浮気・不倫の慰謝料の証拠とは?

不倫のイメージイラスト浮気・不倫の被害者の方が加害者側に対して慰謝料を請求した場合、加害者側が浮気・不倫の存在を正直に認めればよいのですが、否認することがあります。

この場合、慰謝料の請求者である被害者側に、浮気・不倫の立証が要求されます。

もし、浮気・不倫の立証ができなければ、裁判では負けてしまうというわけです。

そのため、浮気・不倫の証拠を押さえることは極めて重要です。

では、浮気・不倫の証拠とはどのようなものがあるのでしょうか。

また、どのようにして収集すればよいのでしょうか。

実務上よく提出される証拠として、以下のようなものがあります。

よく提出される証拠
  • 調査会社の調査報告書
  • スマホ関連(LINEやFacebook等のSNS)
  • 念書などの書面(浮気・不倫を認める内容)
  • 録音データ(浮気・不倫を認める内容)

この4つ関して、違いをわかりやすくするために、特徴、メリット・デメリット、収集方法についてまとめました。

調査会社の調査報告書
特徴:調査会社が作成した素行調査の報告書。例えばラブホテルに出入りする写真など。

メリット:相手方を写真で特定できれば不貞の立証可能性が高い。

デメリット:調査会社に対する報酬が必要。結果として証拠が出ない可能性もある。

入手方法:調査会社へ依頼する。

 

スマホ関連(LINEやFacebook等のSNS)

特徴:LINEやFacebook上のやり取り。浮気・不倫の相手との性交渉をうかがわせるやり取りがあれば立証に役立つ。

メリット:費用がかからない。

デメリット:不貞の立証としては弱い場合がある。パスワード設定がある場合は入手困難。

入手方法:スマホの画面を撮影するなど。

 

念書などの書面(浮気・不倫を認める内容)
特徴:相手方が浮気・不倫について認める内容の書面。

メリット:費用がかからない。不貞の立証可能性が高い。

デメリット:念書を書いてもらうことは困難な場合がある。

入手方法:念書を作成する。

※「浮気(不貞行為)をしないことの誓約書」についてはこちらからダウンロード可能です。

 

録音データ(浮気・不倫を認める内容)
特徴:相手方との会話の録音データ。浮気・不倫を認める発言があれば不貞の証拠となる。

メリット:費用がかからない。

デメリット:不貞の立証としては弱い場合がある。

入手方法:ボイスレコーダー、スマホのボイスメモなどで録音する。

 

 

慰謝料を請求する相手〜配偶者?浮気・不倫相手?〜

裁判配偶者が浮気・不倫をした場合、当該配偶者に対して慰謝料を請求できるのは当然といえます。

では、浮気・不倫の相手に対しても同様に慰謝料を請求できるでしょうか。

結婚生活の安定のためには、浮気・不倫の相手を結婚生活を破壊した共同不法行為者として法的責任を負わせるべきだとするのが日本における支配的モラルであり、残された配偶者の精神的苦痛を慰謝すべきとするのが国民一般の方の意識であると考えられます。

裁判所も浮気・不倫の相手に慰謝料を認める立場を一貫して通しています。

もっとも、浮気・不倫の相手の場合、配偶者本人の場合と比べて責任を軽くする裁判例もあります。

判例 東京高裁昭60.11.20

配偶者(妻)との合意によって不貞行為を行った第三者に対し、夫から慰謝料請求をした事案の控訴審において、第三者が自己の地位や相手方の弱点を利用するなど悪質な手段を用いて相手方の意思決定を拘束したような場合でない限り、不貞あるいは婚姻破綻についての主たる責任は不貞を行った配偶者にあり、第三者の責任は副次的なものとみるべきであるとして、原審の認めた慰謝料額(500万円)を減額して200万円をもって相当と判断しました。
そのため、事案によっては、配偶者と同等の慰謝料が認められない可能性もあると考えてよいでしょう。

配偶者・浮気・不倫相手のどちらに請求すべき?

浮気のイメージ画像共同不法行為である不貞行為の損害賠償義務は、法的には不真正連帯債務と考えられています。

連帯債務である以上、両方に請求しても、いずれか片方のみに請求しても構いません。

当事務所でご依頼を受ける事案の多くは、配偶者との離婚を前提としている場合は配偶者と浮気・不倫相手の両方に請求することが多いです。

また、配偶者とは夫婦関係を修復して離婚しない場合は浮気・不倫相手に対してのみ請求することが多いです。

もっとも、あくまで依頼者の方の気持ちしだいなので、両方に請求しても、いずれか片方のみに請求しても構いません。

 

両方に請求する場合の注意点

お金不真正連帯債務は、弁済(慰謝料を支払うこと)のみ絶対効であるが、それ以外のものは相対効であるという性質の債務です。

簡単に言えば、共同不法行為者の片方が慰謝料を支払えば、他方の慰謝料の支払い義務も消滅します。

そのため両方に請求はできるものの慰謝料の二重取りは認められないことになります。

例えば、Xさんが被害者で、Yさん(配偶者)とAさん(浮気・不倫相手)が加害者だとします。

このとき、Xさんの慰謝料の認定額が300万円だったとします。

Xさんは、YさんとAさんそれぞれに対して300万円全額を請求できます。

また、例えばYさんに150万円、Aさんに150万円を支払ってもらうこともできます。

しかし、いずれか片方から300万円全額の弁済を受けると、それ以上は支払ってもらえなく。

 

 

慰謝料はいつまで請求できる?〜時効について〜

民法は、不法行為に基づく損害賠償請求権について、被害者が「損害及び加害者を知った時から3年間行使しないときは、時効によって消滅する」と規定しています。

そのため時効は3年となります。

もっとも、問題となるのはその起算点です。

具体例で考えてみましょう。

具体例

ある日、XさんがYさん(配偶者)とAさん(浮気・不倫の相手)との不貞行為(1回限り)を知りました。
Xさんは浮気・不倫にショックを受け、それからしばらくしてYさんと別居することとなりました。
Xさんは浮気・不倫を知ってから3年が経過してYさんと離婚しました。
離婚を機に、XさんはYさんとAさんに対して離婚慰謝料を請求しました。

上記の事案で、Xさんは離婚慰謝料を請求できるでしょうか。

浮気・不倫を知ってからは3年以上が経過しているので、時効を援用されると請求できないようにも思えます。

しかし、結論としては、XさんはYさんに対しては慰謝料を請求でき、Aさんに対しては慰謝料を請求できないこととなります。

これはYさんとAさんとでは起算点が異なるからです。

Yさんに対して、離婚慰謝料を請求する場合、Yさんとの「離婚時」に損害が凝縮されると考えられます。

したがって、Yさんに対する関係では、時効の起算点が離婚成立時となり、まだ時効が成立していないことになります。

時間のイメージ画像他方で、Aさんに対する慰謝料請求は、不貞行為を理由とする損害賠償請求です。

この場合、不法行為は「離婚」ではなく「不貞」なのであり、起算点は当該不貞行為を知ったときとなります。

そうすると、Xさんは浮気・不倫を知ってから3年以上経過しているので、Aさんから時効を援用されると慰謝料請求が認められないこととなります。

以上からすると、浮気・不倫の慰謝料請求は比較的短期間で時効が成立する可能性があるといえます。

また、提訴が遅れると、その事実により慰謝料の減額事由として考慮される可能性もあります。

そのため、浮気・不倫の慰謝料については、なるべく早く請求すべきです。

 

 

慰謝料はどのようにしたら回収できる?

慰謝料を回収する方法としては裁判をイメージされる方が多いかと思いますが、裁判の他に、示談交渉や調停手続を利用する方法があります。

それぞれのメリットやデメリットを踏まえて、適切な手段を選択すべきです。

以下、特徴等について解説いたしますので参考にされてください。

裁判

裁判所浮気・不倫の事案では、配偶者に対しては離婚裁判の中で離婚慰謝料も併せて請求することが一般的です。この場合、管轄は家庭裁判所となります。

また、離婚を求めずに、慰謝料の請求のみを行うこともできますが、配偶者に対して離婚を求めずに慰謝料のみを請求するケースは稀です。慰謝料の請求のみを行う場合、管轄は地方裁判所となります。

浮気・不倫の相手に対しては、慰謝料の請求のみを行います。

裁判は、主張立証方法などに関して、専門的な知識が必要とされます。

そのため、通常は弁護士を代理人とします。

裁判の流れについて詳しい解説はこちらをご覧ください。

 

示談交渉

示談交渉は、裁判所などの公的機関を通さずに、当事者同士が任意に話し合いによって解決する方法です。

公的期間を通さないため、話し合いが上手くまとまれば早期に解決できる可能性があります。

しかし、浮気・不倫事案の場合、感情的な対立が生じやすく、冷静に話し合いができないことが見受けられます。

また、法的に有効な示談書を締結していないと、後日トラブルになることもあります。

なお示談書の書き方見本のダウンロードはこちらからどうぞ。

なお、当事者同士での話し合いが難しい場合や示談書の作成を専門家に任せたい場合は、間に弁護士に入ってもらう方法もあります。

協議離婚について、詳しい解説はこちらをご覧ください。

内容証明郵便だけで解決できる?

浮気・不倫の相手に対して、内容証明郵便で慰謝料を請求する事案が見受けられます。

内容証明郵便は、相手に対して、請求の意思を通知するため有効な書面ですが、これだけで解決する可能性は低いでしょう。

例えば内容証明郵便において、相手に300万円支払うように通知しても、すぐに支払ってくれる可能性は低いです。

そのため、通常は示談交渉のスタートとして相手に差し出す書面というイメージです。

 

調停

裁判の流れ配偶者に対して慰謝料を求める場合、離婚調停の中で離婚条件の一つとして慰謝料を求めることがあります。この場合、家庭裁判所が管轄となります。

また、浮気・不倫の相手も、この調停を利用して請求することが可能です。

調停は、裁判所が関与する手続ですが、あくまで話し合いでの解決を目指す手続です。

そのため、話し合いがまとまらなければ調停は不成立となって解決はしません。

また、裁判と異なり、相手が調停を無視したり、欠席した場合でも不利益はありません。

調停について、詳しい解説はこちらをご覧ください。

 

慰謝料の回収についてのまとめ

以下、裁判、示談交渉、調停の違いをまとめると以下のようになります。

裁判

特徴:強制力があり、最終的には判決が言い渡させるため、白黒をつけることができる。

メリット:裁判官という法律のプロが判断してくれる。勝訴すると、不貞についての公的なお墨付きが与えられる。

デメリット:解決までに長期間を要する。弁護士費用等が必要となる。尋問の場合、出廷する可能性が高い。

示談交渉

特徴:当事者間の任意の話し合いによる解決。

メリット:早期に解決できる可能性がある。浮気・不倫の場合、通常の裁判基準より慰謝料が高額化する可能性がある。弁護士を立てると裁判の場合よりも報酬が安くなる傾向。

デメリット:当事者同士では冷静に話し合いができない場合がある。弁護士を立てずに本人だけで進めるとトラブルになる可能性がある。

調停

特徴:裁判所を利用した話し合いの手続。調停委員会が間に入る。

メリット:裁判ほどは時間がかからない場合がある。

デメリット:示談交渉よりは時間がかかる傾向。本人出頭が原則なため会社を休まなければならない。

 

浮気・不倫相手からの反論に対して

浮気・不倫の慰謝料請求では、相手が認めず、争いとなることが多々あります。

ここでは相手からよくある反論について、解説いたします。

「浮気・不倫をしていない」という反論

相手がそもそも「浮気・不倫をしていない」と主張する場合、裁判に移行する可能性が高いと思われます。

相手が認めない以上、慰謝料の金額についての交渉の余地は少ないからです。

そして、裁判となった場合、被害者の方で浮気・不倫の事実について主張立証していく必要があります。

浮気・不倫の証拠の集め方について、こちらもご覧ください。

証拠があれば早期に開示すべき?

浮気・不倫の証拠があるとき、これを相手に早期に開示すべきかどうかが問題となります。

あまり早期に開示すると、こちら側の手の内をさらけ出すこととなるため、奥の手として取っておきたいという戦略もあります。

他方で、証拠を開示しないと、相手が「証拠がなければ認めない」という不誠実なスタンスの場合、示談交渉が難しいため裁判に発展する可能性が高いという問題があります。

このような場合、証拠のすべてを開示せずとも、具体的な証拠の内容を相手に伝えるという方法があります。

例えば、調査報告書を開示しなくても、浮気・不倫の具体的な状況について、いつ、どこで撮影した証拠写真がある、などと相手に伝えれば、こちらの証拠の存在を相手に示しながら、手の内をすべてさらけ出す必要もありません。

相手も裁判では敗訴の可能性が高いと分かれば、示談に応じてくれるようになるかもしれません。

破綻していたという言い訳

離婚浮気・不倫が不法行為となるのは、それが結婚生活の平和の維持という権利又は法的保護に値する利益を侵害する行為と評価することができるからです。

したがって、婚姻関係が既に破綻している場合、原則として、このような権利又は法的保護に値する利益があるとはいえません。

裁判所も「甲の配偶者乙と第三者丙が肉体関係を持った場合において、甲と乙との婚姻関係がその当時既に破綻していたときは、特段の事情のない限り、丙は、甲に対して不法行為責任を負わない」と判示しています(最判平8.3.26)。

したがって、夫婦の関係が既に破綻していたことを主張立証できれば、被害者の浮気・不倫の慰謝料請求は基本的には認められません。

このような主張を「破綻の抗弁」といいます。

執筆者の感覚として、この破綻の抗弁が主張されることはとても多いです。

ところが、裁判実務において、破綻の抗弁が認められる可能性は非常に低いと思われます。

これは裁判所が破綻の事実について、厳格に解釈する傾向にあるからです。

例えば、一方が配偶者に対して強い不満を抱いたり、夫婦仲が多少冷えたりしていただけでは破綻とは認めない傾向です。

一方が将来離婚したいと考えていても破綻とは認められません。

では、どのような場合に破綻の抗弁が認められるかが問題となります。

一概にはいえませんが、裁判例を分析すると、以下の点を検討して破綻の有無を判断しているようです。

破綻の有無の判断材料
  • 家族旅行、行事等を行っていたか
  • 同じ寝室で就寝していたか
  • 性交渉の有無
  • 夫婦の一方が他方に家計を任せていたか
  • 互いの生活に関心を有していたか
  • 不貞に至った経緯や不貞関係を解消した経緯
  • 不貞発覚後も夫婦の一方が婚姻継続の意思を有しているか
家庭内別居は破綻といえるか?

「家庭内別居状態だったことから破綻していた」という言い訳はよく耳にします。

確かに、家庭内別居状態まで至ると破綻が認められることもあります。

しかし、現実には家庭内別居状態の立証は容易ではありません。

家庭内別居状態であったといえるためには、やはり上記の点について具体的に主張立証する必要があります。

別居していたら破綻といえるか?
家庭内ではなく、実際に別居している場合、「既に破綻していた」という主張が認められそうです。

確かに、長年月に渡って別居している場合、破綻していたといえるでしょう。

しかし、別居して短期間のうちに浮気・不倫をした場合は、「既に破綻していた」とはなかなか認められないのが現状です。

「慰謝料の額が高い」という反論

慰謝料のイメージイラスト加害者が浮気・不倫の事実を認めているものの、慰謝料の額を争うこともよくあります。

このようなケースでは、当該事案における妥当な慰謝料の額を判断することが重要です。

仮に裁判になったとき、請求している慰謝料が認められるのか否かを押さえておけば、請求金額を減額すべきか否かの判断ができるからです。

具体的な事案における慰謝料の適正額については、素人の方は判断が難しいと思われます。

専門家に相談するなどして減額の要否を判断するとよいでしょう。

 

「慰謝料を支払うことができない」という言い訳にはどう対処する?

相手が浮気・不倫の事実や慰謝料の額の妥当性自体は認めているものの、「お金がないため慰謝料を支払いことができない」という場合もよくあります。

確かに、浮気・不倫の慰謝料の平均的な相場からすると、確かに、一括して支払える方はそう多くありません。

他方で、相手の「お金がない」という言い分を無条件に信じることもできないでしょう。

そこで、このようなケースでは以下のような対応を検討するとよいでしょう。

 

収入の証明資料の開示を求める
配偶者の浮気・不倫の相手に慰謝料を請求している事案では、相手に収入の証明資料の開示を求めることで、支払能力についてある程度判断できる場合があります。

収入の証明資料とは、例えば、源泉徴収票や所得証明書となります。相手が自営業者の場合は確定申告書も挙げられます。

相手が高収入の場合であれば、一括払いであっても支払い能力は高いと考えられます。

高収入の場合、預貯金等の流動資産が多い可能性が高いからです。

また、流動資産がなかったとしても、高収入の相手であれば借り入れなどによって支払原資を確保できる可能性もあります。

逆に、相手の年収が低ければ、一括払いは困難と考えてよいでしょう。

また、相手が収入の証明資料を開示してくれない場合は、高収入の疑いがあります。

慰謝料の減額や分割払いを提案する
相手の支払能力が乏しい場合、慰謝料を相場よりも減額したり、分割払いを提案することも検討しましょう。

相手の収入が低く、生活するのもやっとのような状態の場合、仮に裁判を起こして判決を取ったとしても、現実的に回収できる可能性は低いからです。

このような場合、請求する側も大幅に譲歩せざるを得ないでしょう。

具体的に説明すると、例えば、慰謝料の相場が200万円の事案で、一括払いであれば150万円まで減額し、1ヶ月5万円の分割払いであれば200万円全額を求める(40回払い)、などの選択肢を与える方法があります。

相場よりも50万円も減額するのであれば、相手は借り入れするなどして、一括払いに応じてくれるかもしれません。

一括払いが難しくても、長期の分割であれば、ほとんどの方は支払えるはずです。

そのため長期分割の場合、慰謝料を減額する必要性は少ないと考えられます。

なお、慰謝料の示談がまとまった場合は、トラブル防止のために、示談書を作成することをおすすめしています。

当事務所のホームページでは、示談書の書き方見本がダウンロード可能です。
ダウンロードはこちらからどうぞ。

 

 





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