夫の給料が激減したのですが、婚姻費用の算定はどうなりますか?

悩む女性私は、パートをしており年収は100万円程度です。

夫の年収は、一昨年は会社員として年収1000万円ほどありましたが、昨年3月に退職し、その後自営業をはじめました。

昨年の自営業の収入は、ほとんど赤字でした。

もっとも、今年からは収益を出せる見込みがあると、夫は言っております。

おそらく、500万円程度だそうです。

この場合、婚姻費用の基礎となる年収はいくらとなりますでしょうか。

弁護士の回答

まとめると、一昨年の収入は1000万円。

昨年の収入は、ほとんどない。

今年の収入は、500万円の見込みということです。

この質問に対し、当事務所の弁護士がご回答いたします。

婚姻費用の算定は、事案によって考慮事情は多種多様で、画一的に判断できるものではありません。

もっとも、本件では以下のような事情を検討する必要があります。

 

基本的な考え方

給料婚姻費用は原則として、義務者が分担をしないため、権利者が分担を請求した特定の時点及びそれ以降における額を算定します。

こうした婚姻費用の算定の基礎となる収入を特定の時点における収入と考えれば、給与取得者の場合、その時点の給与明細書を提出してもらえればよいはずです。

しかし、給与額等は毎月で異なります。

自営業者の場合は、売上げが収入に直結するケースも多いため特に顕著です。

そこで、基本的には年収をベースに算定します。

 

自営業者の場合

自営業者の場合、確定申告書の「課税される所得金額」が婚姻費用算定の総収入となります。

しかし、「課税される所得金額」とは税法上、種々の控除がされた結果ですので、その金額をそのまま当然に総収入と考えることが相当ではない場合があります。

配偶者控除等がこれにあたります。

すなわち、自営業者の場合には、確定申告書の「課税される所得金額」が算定のベースとなります。

 

潜在的稼働能力

義務者の収入を「0」とするのは、無職で収入がなく、かつ、自身の健康状態等により仕事に就いて収入を得ることができない場合や、生活保護費を受給している場合です。

このような場合以外では、潜在的稼働能力に基づいて計算されます。

具体的には、賃金センサスを参照しつつ、個別具体的な事情により判断することが多いと思います。

なお、賃金センサスを参照するとしても、定職について働いていた経験がありすぐに定職に就くことができる場合と、すぐに定職に就くことができない場合とで適用の区分が異なります。

 

 

年収に大きな変動がある場合

この場合に、義務者の収入をどのように認定するかで争いがあります。

通常、昨年の収入資料(確定申告書、源泉徴収票等)に基づき判断します。

これは、昨年の収入がわかれば今年もほぼ同様の収入があるものと推定できるからです。

義務者の年収が減少(もしくは増加)するかについては、そのような事情が認められるか否かという問題が生じます。

つまり、年収の減少(もしくは増加)を主張する者は、調停等において資料を提出し、義務者が主張する年収の減少の可能性や,権利者が主張する年収の増加の可能性を主張する必要があります。

年収の増加もしくは減少の可能性が高いと判断されれば、それを前提に算定表により算出することになります。

 

本件に関する婚姻費用の算定について

算定の基礎となる義務者(夫)の年収の可能性として、考えられるものとして主に、以下の3つ等が考えられます。

①昨年の収入を基礎とする考え方

②今年の収入の見込額を基礎とする考え方

③賃金センサスを参考に個別的事情により算定する考え方

なお、一昨年の年収は会社員時代の年収ですので、基本的には考慮されないと考えられます。

では、①昨年の収入を基礎とする場合について、この場合には年収額はほとんど「0」となるため、当事者の公平に反し、また事実を的確に反映していないと考えられます。

そのため、①の考え方はあまり採られないでしょう。

次に、②今年の収入の見込額を基礎とする場合については、権利者(妻)の方で今年の年収の見込額を主張・立証する必要があります。

この立証は必ずしも容易ではありません。

したがって、②の考え方を採るには資料の収集等を積極的に行う必要があります。

最後に、③賃金センサスを参考に個別具体的に算定する場合については、これを具体的に算出するには多種多様な事情の考慮が必要となります。

そのため、主張すること自体がそもそも難しいという問題があります。

お金以上より、原則としては②の考え方によるべきですが、②の考え方を採り得ない場合には③の方法によって算定せざるをえないでしょう。

本件では、今年の年収額を立証できる場合には500万円を、それができない場合には賃金センサスを参考に算定することになると考えられます。

もっとも、暫定的な婚姻費用を決めておき、確定申告書が提出された後に正確な婚姻費用を算出するという可能性もあります。(このような解決が現実的と考えられます。)

なお、婚姻費用や養育費の算定は、あらゆる事情を考慮して判断されます。

また、算定方式を用いて正確な算定をすることも可能ですから、詳しくは離婚問題に精通した専門の弁護士にご相談されることをおすすめします。

 

 


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