有責配偶者が相手でも財産分与をしなければならないのですか?


私の妻は日ごろの不摂生がたたり、まったく家事も育児もしてきませんでした。妻が心配で私自身仕事ができなくなり、いまとなっては家庭崩壊の状態です。
婚姻関係を破綻させたのは妻だと考えていますが、妻からは財産分与を請求されています。
それでも財産分与をしなければならないのでしょうか。
財産分与はしなければなりませんが、慰謝料的要素が考慮される可能性があります。
財産分与において考慮される事項
財産分与とは、同居期間中に夫婦が協働して築いた財産を折半することをいいます。
財産分与を定めた民法768条3項は、「当事者双方がその協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮して、分与をさせるべきかどうか並びに分与の額及び方法を定める」と規定されています。
夫婦関係における慰謝料は、婚姻関係を破綻させた配偶者に対し、精神的苦痛を負わされたことへの責任を追及するものです。
このような慰謝料的な要素を、上記民法768条3項に規定する「その他一切の事情」として、財産分与で一緒に処理することを裁判所は認めています。
最高裁は次のように述べています。
「裁判所が財産分与を命ずるかどうかならびに分与の額及び方法を定めるについては、当事者双方におけるいつさいの事情を考慮すべきものであるから、分与の請求の相手方が離婚についての有責の配偶者であつて、その有責行為により離婚に至らしめたことにつき請求者の被つた精神的損害を賠償すべき義務を負うと認められるときには、右損害賠償のための給付をも含めて財産分与の額および方法定めることもできると解すべきである。」
【最高裁昭和46年7月23日判決】
財産分与も慰謝料も、金銭的な問題であるという点では同じですので、あわせて解決が図られることとなります(これを「慰謝料的財産分与」といいます。)。
慰謝料的財産分与の方法
妻が婚姻関係を破綻させるような行為を行った場合、夫から妻に対し、慰謝料を支払うよう求めることができます。
しかし、一般的には、妻側に支払い能力がない(=お金がない)というケースがほとんどです。
そこで、財産分与について、夫側に慰謝料総額分有利な計算をすることで、財産分与の清算とすることができる可能性があります。
たとえば、夫婦の総財産が3000万円、慰謝料相当額が500万円だった場合、本来それぞれの取り分は1500万円ですので、夫が妻に支払うべき金額は1500万円です。
ここで、慰謝料を考慮し、500万円を減額して、夫から妻に支払う金額を1000万円にすることで、実質的に夫側が妻からの慰謝料相当額を回収したことになります。
ただし、このような清算の仕方は、財産分与が比較的に高額な場合にしか利用できません。財産分与がそもそも低額な場合は、慰謝料は慰謝料として独自に分割払いをしてもらう他ありません。
いずれにしても、婚姻関係を破綻させたことに対する責任は追及すべきといえます。
財産分与の仕方は様々です
裁判所による財産分与の清算の仕方は、事案にもよりますし、裁判官の価値判断によっても左右されます。
まずは、夫婦の清算すべき財産がどの程度の金額なのか、数字で明らかにしていくことが重要です。
財産分与についてはこちらをご覧ください。

相談者のような、家庭崩壊の大きな要因として妻側にあることが認められれば、妻は夫に対して慰謝料を支払うべき立場になることは十分考えられます。
過去の裁判例では、結婚後2年目で妻が数種類の酒類を、昼夜を問わず飲むようになり、その翌年からは育児も行わなくなった、その翌年にはアルコール依存症と診断されたものの断酒できず、夫に暴力を振るってきたという妻について、慰謝料支払義務を認める内容の判断をしたものがあります。
なお、ケースバイケースではあるものの、妻がいたことによって夫も仕事ができるという関係にあるのがほとんどですので、妻の日常の行為に非があった場合でも、財産分与はしなければならないのが原則です。


「財産分与」についてよくある相談Q&A
-
離婚した当事者の一方には相手に対して財産の分与を求める権利があり、これを財産分与請求権といいます。 この財産分与の目的は、それまで夫婦が協力して築き上げてきた財産を公平に分配することです。...[続きを読む]財産分与は、夫婦それぞれの財産形成に対する貢献度によって決まるという考え方が取られています。 そして、妻の方が、専業主婦であったとしても、家事労働は立派な労働と評価されます。 したがって、基本的に...[続きを読む]ただし、離婚してから2年たつと、財産分与を求めることはできなくなります。 財産分与とは公平の観点から,結婚している間に夫婦が協力して築いた財産を、離婚に際して分け合うことです。 その財産(特に、土地...[続きを読む]離婚する夫婦がそれまで暮らしていた建物やマンションなどの不動産がある場合には、その不動産も財産分与の対象になります。不動産の財産分与は、所有権をどうするかという問題です。この場合、まずは不動産それ自体...[続きを読む]離婚事案では、当事者の年齢が若いことが多く、ほとんどのケースでは住宅ローンが残っています。ローンが残っている場合、不動産の評価は、時価からローンを控除して算出するのが家庭裁判所の実務です。...[続きを読む]預貯金は、夫婦が婚姻中に形成したものであれば、財産分与の対象となります。 基本的には、結婚したときから別居したときまでの預貯金が対象です。 婚姻前の預貯金については、その名義人である夫(妻)の特有...[続きを読む]夫もしくは妻が、離婚時に既に退職金の給付を受けている場合は、婚姻期間中の部分が財産分与の対象となります。 たとえば、夫が20年勤務して1000万円の退職金を得たが、そのうち婚姻期間が10年だった場合に...[続きを読む]結婚中、夫婦が株式などの有価証券を取得した場合は、その財産価値がある限りは財産分与の対象となります。財産価値があるかどうかを判断するためにも、株式の時価を調べる必要があります。...[続きを読む]生命保険(いわゆる積立型の保険)や学資保険、損害保険の中には、契約内容によって解約した場合に解約返戻金が発生するものがあります。 解約返戻金が発生する保険は、財産的価値があると評価できるので、保険も財...[続きを読む]財産分与の対象になる可能性がある動産とは、夫婦が共に暮らしていた自宅内にある家具・家電や、自動車のことです。 これらのうち、婚姻後に夫婦共有財産から購入した動産が、財産分与の対象となります。...[続きを読む]まず、結婚生活を営むためにつくった負債(いわゆる借金)については、財産分与の際に考慮される可能性があります。 これは、夫婦や子どもの共同生活に必要な借金は、夫婦それぞれが連帯して責任を負うことが公平...[続きを読む]結婚期間中に、夫が交通事故にあったことで支払われた損害保険金については、財産分与の対象となるでしょうか。 裁判例の中には、損害保険金のうち、自賠責保険から支払われた部分について、「実質的に考えれば婚...[続きを読む]財産分与にあたって、夫または妻以外の第三者名義となっている財産についても分与してもらえますか、という相談は多くあります。 例えば、夫が会社の経営者であり、預貯金や車、不動産などたくさんの財産が会社名義...[続きを読む]【対象財産の基準時】 離婚が成立する前に、すでに別居しているというケースは多くあります。 別居期間が長くなると、その間に夫婦の財産が増えたり、減ったりすることがあります。この場合、どの時点の財産を財産...[続きを読む]不動産や預貯金など、自分名義のものは離婚後も自分のものだと考えてしまいがちですが、どちらの名義かということだけで判断すると、分与の割合が一方に偏ってしまい公平な清算にならないことがあります。 そこで...[続きを読む]とにかく早急な離婚を望まれた場合などに、財産分与についての合意をすることなく離婚してしまった方もいらっしゃるかと思います。 ただし、離婚が成立した時点から2年以内であれば、財産分与を請求することはでき...[続きを読む]まず、財産分与について合意する前に、財産を保有・管理している相手方が、財産を処分するおそれがある場合は、処分を止める必要があります。 例えば、財産分与の対象となる財産が自宅マンションしかないにもかか...[続きを読む]夫婦が5000万円のマンションを購入しました。その際、妻Xさんは、結婚前から自分で貯金していた500万円と、Xさんの親から援助してもらった500万円、合計1000万円を頭金として支払い、残りの4000...[続きを読む]子ども名義の預貯金や、児童手当を預貯金として残していた場合に、その預貯金は財産分与の対象となりますか?また、学資保険のような子どものための保険についてはどうなりますか?...[続きを読む]不動産や預貯金など、自分名義のものは離婚後も自分のものだと考えてしまいがちです。 しかし、どちらの名義であるかということだけで判断してしまうと、分与の割合が一方に偏ってしまうことも多く、 公平な清算...[続きを読む]私は、妻Aと離婚協議をしており、子どもBはAが監護するということになりました。 そして、私はBのこともあるので、事業の上手くいっている今のうちに財産分与として不動産を譲り、養育費も一括で支払うことに...[続きを読む]私はいま妻との離婚を考えています。二人で折半する預貯金はそれほどないのですが、私が親戚や友人からいただいたご祝儀を結婚式の資金に充てたので、その分は返してもらうべきだと考えています。しかし、妻はそれを...[続きを読む]私はいま夫との離婚を考えています。結婚する際、結納金として 200万円を受け取っており、それを使って家具・家財をそろえていました。しかし、夫は、家具・家財はすべて置いていけといって聞きません。私として...[続きを読む]私が浮気をしたことにより妻と離婚することになりました。 離婚条件の取決めをするにあたり、私が慰謝料と養育費を支払うことになりましたが、妻は、私が浮気をしたせいで離婚することになったのだから、慰謝料や...[続きを読む]財産分与は、夫婦の共有財産を半分にわけるものと聞いています。 私の場合、結婚した時期が遅かったため、独身時代に貯めていた貯金が多くありました。 そのため、財産分与にあたって別居時の残高のすべてを分...[続きを読む]私は、いま夫と別居しています。 同居中は二人で決めて毎月一定額のお金を子ども名義の預金に貯蓄していました。その他、お年玉や出産一時金なども入金しています。 これらは子どものために貯めてきたものであ...[続きを読む]私たち夫婦は共働きで、子どもは2人います。 現在離婚協議中ですが、夫は私よりもかなり多くの高収入を得ているにもかかわらず、預金額はほとんどないばかりか、借金も多くあることがわかりました。 一方、私...[続きを読む]私はいま妻と離婚協議中です。 以前、婚姻費用の調停を申し立てられ、その額は毎月10万円と決まりました。 しかし、妻は何かにつけ生活費が足りないと言うので、やむなく貸付名目でお金を渡していました。 ...[続きを読む]私は、2年前から夫と別居しており、現在離婚協議中ですが、財産分与でもめています。 私は、別居をした2年前の時点からだと思うのですが、夫は、1年前の時点からだと主張しています。 というのも、夫とは、...[続きを読む]財産分与をするにあたり、その基準時は別居時と聞きました。 しかし、私たち夫婦は一度別居しましたが、その後再び同居を始めましたが、現在では本格的に離婚の話をしていますので、また別居をしています。 い...[続きを読む]私は現在妻と離婚協議中なのですが、私が同居中に父へ送金した250万円を財産分与に含めるかどうかでもめています。 というのは、この250万円は、私から私の父への贈与であって、夫婦の財産を減少させようと...[続きを読む]私は結婚前から契約していた保険を解約し、結婚後にその解約返戻金を原資として積立型の保険に加入しました。 妻と離婚した今、財産分与の協議をしているところですが、元妻は、現在の解約返戻金全額を財産分与の...[続きを読む]財産分与においては、別居時が基準になると聞いたことがあります。 ただ、私の場合には、平成20年8月末頃から別居しており、平成20年9月下旬には一度、離婚調停も経験しています(ただし、不成立に終わりま...[続きを読む]私の夫は、結婚前から、「母親に対する感謝の気持ちを込めて、毎月5万円を仕送りしている。」と言っていました。 夫の母は、シングルマザーで、決して裕福ではないなかで、夫を頑張って育てあげたようです。そう...[続きを読む]婚姻生活が長い場合、特有財産の主張が認められない可能性があります。財産の取得時期が古い場合、証拠が散逸してしまい、何が原資であったかが不明になる事案があります。この場合、特有財産か否か不明なものは、分...[続きを読む]私は会社を経営しています。妻と結婚してもう20年以上が経ちますが、これまでずっと真面目に働いてきて、従業員も数多くいます。 しかし、妻が私に突然離婚を請求してきました。...[続きを読む]私の妻は日ごろの不摂生がたたり、まったく家事も育児もしてきませんでした。妻が心配で私自身仕事ができなくなり、いまとなっては家庭崩壊の状態です。 婚姻関係を破綻させたのは妻だと考えていますが、妻からは財...[続きを読む]負担した住宅ローンについては、財産分与において考慮される可能性があります。別居後に住宅ローンを返済していた場合、その返済分について、相手方はなんら寄与・貢献していないことになります。そのため、財産分与...[続きを読む]婚姻期間中に父が亡くなり、遺産として不動産を取得しました。私は、遺産不動産には住まずに人に貸して賃料収入を得ていましたが、賃料収入が1000万円ほど貯まった頃、妻と離婚することになりました。妻は、貯め...[続きを読む]私(夫)が購入したマンションは、2000万円でしたが、そのうち、800万円は私の結婚前からの預金で購入したものです。 しかし、このたび、離婚となって、このマンションが問題となっています。 妻は、こ...[続きを読む]