複数の不倫相手に慰謝料請求できる?【弁護士解説】

執筆者
弁護士法人デイライト法律事務所 弁護士。
離婚分野に注力し、事務所全体の離婚・男女問題の相談件数は年間700件を超える。(2018年実績)
慰謝料請求について質問です。

夫は、複数の女性と浮気をしています。

私が把握している限りでも、少なくとも2名の女性と不倫関係にあります。

このような夫を許すことができないので、夫との離婚を考えています。

また、夫に対する慰謝料を請求することは当然ですが、夫と不倫関係にある全ての女性に対しても慰謝料請求をしたいです。

夫が複数の女性と浮気をしていた場合、夫と女性全員に対し、慰謝料請求することはできますか?

 

 

 

弁護士の回答

交渉次第では、夫及び不貞関係にあった全ての女性から慰謝料を獲得できる場合があります。

ただし、裁判になった場合には、夫や複数の女性に対する慰謝料請求が一部認められないこともあります。

 

不貞慰謝料の相場ってどれぐらい?

電卓そもそも、離婚慰謝料は、相手方の有責行為によりやむなく離婚するに至った精神的苦痛に対する賠償を求めるものです。

しかし、精神的苦痛は客観的算定が困難で、事案によっても異なるので、明確な基準があるわけではございませんが、一般の離婚の場合に支払われている慰謝料の額は、平均して200万円~300万円程度が多いです。

 

不貞相手が複数いる場合

では、配偶者に不貞相手が複数いる場合、200万円~300万円という慰謝料額が比例的に増えていくのでしょうか?

例えば、旦那さんがAさん、Bさん、Cさんと不貞した場合、Aさんからは200万円、Bさんからも200万円、Cさんからも200万円の慰謝料が認められるのでしょうか?

以下では、裁判になった場合の見通しと交渉(示談)で合意が成立できる場合について、ご説明します。

 

 

法律上はどのように扱われる?

はじめに、妻が、夫及び全ての女性を被告にして、裁判(訴訟)を提起した場合の見通しについて解説いたします。

配偶者に不貞相手が複数いる場合であっても、裁判所は、原則として、慰謝料額が単純に倍増するような判決は出さないと考えられます。

裁判すなわち、上述のとおり、慰謝料額の相場は、おおよそ200~300万円と言われていますが、仮に、配偶者が3名の方と不貞をしたとしても、基本的には、慰謝料額の総額が600万円~900万円にはならないということです。

したがって、夫が複数の女性と不貞行為をしていた場合であっても、原則として、200~300万円の慰謝料額が認定されると考えられます。

なお、複数の女性との不貞行為は、行為態様が悪質であると認定される可能性があり、その場合には、慰謝料額の増額事情になりえます。

しかし、その際にも、原則として、200万円~300万円内での金額が認定されると考えられます。

慰謝料の考慮事情については、こちらのページをご覧ください。

もっとも、夫と女性との間で責任の重さに差があるような場合(積極性や主導性など)について、夫と不貞相手との間で慰謝料の額に差をつけることが認められるかについては、裁判例上も争いがあります。

仮に、裁判官が心証として、夫に対する慰謝料支払義務は300万円程度であるが、積極的であったのは夫の方であり、不貞相手の責任は低減すべきであるとの判断に至ったとします。

この場合に、①夫には300万円の慰謝料の支払義務を認め、女性には100万円のみの慰謝料の支払義務のみを認め、100万円の限度で連帯するという裁判例と、②夫と女性ともに、300万円の慰謝料の支払義務を認め、300万円の連帯責任を認める裁判例があり、裁判所における見解の統一がなされていない状況です。(後者の見解に立つ場合には、責任の重さの差(責任割合)は求償関係の問題に過ぎないと考えることになります。)

 

 

自分だけではないという主張の可否

不貞相手の女性が、裁判において、「旦那さんには、私以外にも不貞相手がいる」との主張をすることによって、自らの不貞行為の違法性を低減させ、これを慰謝料の減額事由として考慮すべきとの主張をすることがあります。

このような主張が認められるのでしょうか?

 

裁判例

結論としては、複数の不貞相手がいることを不貞相手の慰謝料の減額事由として考慮したと考えられる裁判例(東京地方裁判所平成25年4月17日判決)と、他に不貞相手がいることは慰謝料の減額事由にならないとした裁判例(東京地方裁判所平成22年7月6日判決)のいずれもあり、裁判所において見解の統一がなされていません。

したがって、後者の見解に立つ裁判官の場合には、「あなたの旦那さんには、他にも不貞相手がいる」という主張を認めないことになります。

 

交渉の場合

以上までの説明は、あくまでも裁判になった場合に、裁判所がどのように判断するかという視点で解説しました。

しかし、裁判ではなく、交渉(示談)の場合には、複数の不貞相手から相当額の慰謝料を獲得できるケースもあります。

例えば、Aさん、Bさん、Cさんそれぞに対し慰謝料請求をし、Aさんは150万円、Bさんは100万円、Cさんは200万円を支払うという合意が成立するということも理論上は考えられるのです。

すなわち、この場合には、一般的な相場よりも高額な慰謝料を獲得できるということになります。

もっとも、このような進めることができるかは、相手方との交渉次第ということになります。

交渉の場面では、裁判まで進み判決になる場合の見通し等を踏まえ方針を判断しなければならない場合も多々あり、必ずしも、このように複数の不貞相手から相当額の慰謝料を獲得できるケースは多くはありません。

相場よりも高額な慰謝料を獲得することができた解決事例は以下をご覧ください。

 

 

 

本件における弁護士の考え

まずは、すぐに裁判をするのではなく、夫および不貞相手の女性たちに対し、個別に慰謝料請求をすることをお勧めします。

そして、それぞれの女性から最大限の慰謝料を支払ってもらえるように交渉をすべきです。

なお、その際には、裁判になった場合には、上記のとおり、200万円~300万円という基準がありますので、その金額を念頭に置いて、交渉をすることが望ましいといえます。

もっとも、このような方法は、多数の相手方に請求・交渉しなければならないため、多大な労力がかかり、また、夫と不貞関係にあった女性との交渉という点で精神的にも大きな負担になることも考えられます。

仮に、本件を弁護士にご依頼する場合には、弁護士から相手方に書面を送るなどして、交渉を開始し、その後の交渉の窓口も弁護士事務所になるため、相談者のご負担は大きく軽減されると思います。

また、本件の場合、旦那さんとの離婚問題をどうするかという問題もあります。

旦那さんとの婚姻関係を継続するか否かによっても、慰謝料の金額が変動する可能性もあります。

そのため、旦那さんとの離婚問題と女性らに対する慰謝料請求を、全体として本件を解決することが望ましいので、一度離婚を専門とする弁護士にご相談することをおすすめします。

 

 

 


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