別居中の生活費いくらもらえる?

悩む主婦のイメージイラスト夫と離婚しようと思っています。別居を考えていますが、私は専業主婦なため、生活費の面で不安があります。

夫に対して、生活費を請求した場合、いくらもらえるのでしょうか?

 

弁護士の回答

別居別居中であっても、夫婦である以上は、一方が生活費に困っているときは、他方に対して生活費の支払を請求することができます。

夫婦である以上は、互いに、自分の生活と同レベルの生活を送ることができるようにしなければならないという義務(生活保持義務)があるからです。

この生活費のことを婚姻費用といいます。

弁護士では、婚姻費用は、相手にいくらくらい請求するのが妥当なのでしょうか?

婚姻費用は、実務では、算定表が基準になり判断される傾向にあります。

ここでいう算定表とは、婚姻費用について簡易迅速な算定が可能になるよう裁判所の研究会が作成したもので、この算定方法の合理性について最高裁が承認(最決平18.4.28)したことから、広く実務で使用されるようになっています。この表によると、婚姻費用の適正額は、夫婦双方の年収を基準にして定まることになります。

チェック表では、算定表はどのように利用すればよいのでしょうか。

算定表は、「夫婦のみの表」「子1人の表」のように分かれているため、まずは、ご自身がどの算定表を用いるケースなのかを確定する必要があります。

ここでは、夫が会社員で、妻が専業主婦であることを前提に説明をします。

源泉徴収票のイメージ画像まずは夫の源泉徴収票を手元に用意してください。その源泉徴収票の「支払金額」の蘭に記載されている額が算定表に当てはめるべき年収ということになります。算定表をみる場合には手取り金額を基準にするわけではないので、注意が必要です。

ここでは、源泉徴収票の「支払金額」が500万円だったと仮定しましょう。そうすると、算定表の義務者の年収は500万円ということになり、権利者の年収は0になりますので、適正額は6~8万円ということになります。

したがって、夫に対しては婚姻費用として6~8万円を請求していくことになります。

 

婚姻費用の注意点

弁護士婚姻費用の受取は、離婚が成立するか、別居を解消するまでとなります。

養育費と混同されがちですが、養育費は、離婚後、子どもの扶養義務を負う相手方に対して請求できる権利です。

このことから、婚姻費用は、あくまで一時的なものであり、それほど重要ではないと思われる方もいらっしゃいます。

しかし、婚姻費用は、極めて重要です。適切な額で合意しないと、その他の離婚条件に悪影響を及ぼす可能性があります。

例えば、婚姻費用の適正額(裁判基準)が月額12万円、養育費の適正額(裁判基準)が9万円だったとします(婚姻費用は、子供に加えて配偶者の扶養義務に基づくものです。養育費は、子どもの扶養義務だけですので、一般的に婚姻費用の額よりも下がってしまいます。)。

この事案において、仮に、婚姻費用を月額8万円で合意したとしましょう。

すると、養育費の交渉において、養育費をもらう側(通常は妻側)としては、月額9万円の養育費を請求することが難しくなります。なぜならば、支払う側としては、婚姻費用であれば月額8万円なのに、なぜ離婚したら9万円に増えてしまうのか、納得がいかないからです。

女性このように、婚姻費用は後々の離婚交渉に大きな影響を及ぼします。

適正額よりも少ない額で合意してしまうと、養育費やその他の財産給付において損をしてしまう可能性があるのです。

そのため、適正額での合意が極めて重要となります。

 

婚姻費用は遡って請求できない

時計婚姻費用は、請求の意思を相手方に通知したときから支払義務が発生すると考えられます。

例えば、別居して、何か月も経ってから、婚姻費用を求めた場合、別居時に遡って未払い分を請求することは難しいケースがほとんどです。

そのため、別居と同時に、相手方に対して婚姻費用を請求することがポイントとなります。

また、請求の仕方としては、弁護士名による内容証明郵便がよいでしょう。

 

生活費を請求する場合のコツ

相手方に生活費の適正額を理解してもらう

女性離婚を前提に別居した妻が夫に対して「生活費をください。」と言って、夫は支払ってくれるでしょうか。

夫側からは「なんで離婚するのに生活費を支払わなければならないんだ!」と一蹴される可能性が大だと考えられます。

ご質問のケースのように、別居する場合はなおさらでしょう。夫からは「別居するのに生活費を支払う意味がわからない。」という返答が予想されます。

夫が生活費を支払ってくれない場合、最終手段としては、家庭裁判所へ婚姻費用の調停を申立てることも考えられます。

しかし、調停手続は時間を要すること、当事者の負担が大きくなることから、できるだけ避けた方が良いでしょう。

 

夫を説得することが可能な事案では、あえて調停手続を申立てる必要はなく、かえって弊害が大きいと思われます。

説得するコツとしては、夫に対して、「生活費は婚姻費用と言って、支払い義務があること」と「適正額」について理解してもらうことです。

例えば、弁護士から「◯◯円が適正額だと聞きました」などと伝えてみると、夫側の対応が代わるかもしれません。専門家の意見であれば、耳を傾ける可能性があるからです。

また、すぐには信じられなくても、インターネットなどで調べてくれれば、婚姻費用の法的義務について理解できる可能性が高くなります。

 

生活費の支払いを口約束にはしない

夫側が生活費の支払いに応じてくれる場合、できるだけ書面にしましょう。

口約束では、途中で支払ってくれなくなる可能性があるからです。

婚姻費用の合意書のサンプルはこちらをごらんください。

なお、日本では、婚姻費用の合意自体、口頭でも成立するので、法律的には書面は不要です。

しかし、口約束の場合、途中で、夫側から「そんな約束していない」と言われることが多々あります

そのような場合、妻側が「合意がある」と言っても、相手は認めてくれません。

裁判所(婚姻費用の調停や審判)では、婚姻費用の合意を主張する側、つまり妻側に立証責任があります。相手方が否定している以上、合意書などの客観的な証拠がないと、合意の存在は認めてもらえない可能性が高いと思われます。

そのため、婚姻費用についてはできるだけ書面化しておいた方がよいでしょう。

婚姻費用について、適正額を調べたい方はこちらもご覧ください。

 


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「婚姻費用」についてよくある相談Q&A


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