養育費に時効はありますか?【弁護士が徹底解説】

養育費について質問です。 養育費について質問です。

公正証書で養育費を月額3万円と定めて離婚しました。

ところが、相手方が養育費を支払わなくなって4年が経ちます。

養育費も時効によって消滅するのでしょうか?

 

 

 

養育費は、原則として、5年間の短期消滅時効にかかります。

この問題について、当事務所の離婚問題専門の弁護士が解説いたします。

養育費の時効とは

お金養育費の請求権は、原則、定期金債権です。

すなわち、月ごとに養育費支払請求権が発生します。

毎月弁済期が到来しますので、月ごとに弁済期の翌日から年5%の遅延損害金が発生し(民法419条・404条)、そのときから消滅時効が起算されます。

そして、養育費は、「年又はこれより短い時期によって定めた金銭その他の物の給付を目的とする債権」なので、5年間の短期消滅時効にかかります(民法169条)。

ただし、すでに弁済期の到来した過去の養育費債権については、確定判決、審判、裁判上の和解、調停等確定判決と同一の効力を有するものによって確定した場合は、消滅時効の期間は10年に延長されます(民法174条の2第1項)。

 

養育費を調停で合意した場合の時効

具体例で分かりやすく説明したいと思います。

例えば、養育費の調停において、以下のような条項が定められることがしばしばあります。

第1項
相手方は、申立人に対し、(当事者間の子)の平成○年○月までの未払い養育費として、○万円の支払義務があることを認め、申立人が指定する口座に振り込む方法により支払う。

第2項
相手方は、申立人に対し、(当事者間の子)の養育費として、平成○年○月から同人らがそれぞれ20歳に達する月まで、1人あたり月額○万円を支払うこととし、申立人が指定する口座に振り込む方法により支払う。

 

第1項

過去の養育費についての規定です。

これが、調停調書になっていますので、過去の未払い分についての消滅時効は、10年になるわけです。

もっとも、前述のとおり、この消滅時効が5年から10年に延長されるのは、あくまでも、過去の未払い分についてだけです。

第2項

第2項で定められた将来分の養育費については、調停調書で定められたとしても、消滅時効は5年のままということになります。

 

養育費を公正証書で取り決めた場合の時効

書類これに関連して、過去の未払い分の養育費の支払義務について、公正証書で定めたとしたら、消滅時効はどうなるのでしょうか。

養育費を取り決める公正証書には、通常、強制執行の認諾文言を入れることが多く、その場合は、訴訟を経ないでも直接、強制執行が可能です。

そのため、前述の「確定判決と同一の効力」の要件を満たすとも思えるため問題となります。

この点、養育費ではなく、賃金の例で、東京高裁(昭和56年9月29日)は、強制執行認諾文言付きの公正証書について、「執行力があっても既判力がないから、民法174条の2第1項に規定する確定判決と同一の効力を有するものにより確定した権利には該当しない」旨の判断を示しています。

執行力と既判力については、ここでは扱いませんが、要するに、公正証書と調停調書等は、時効との関係では別ということです。

 

 

未払い養育費が発生している方はお早めに弁護士へご相談ください。

ポイントの解説をする男性のイラストこのように、過去の未払い養育費がある方は、特に、消滅時効に注意が必要です。

養育費について、こちらも合わせてごらんください。

詳しくは、この問題に詳しい、当事者の弁護士にご相談ください。

弁護士へのご相談はこちらからどうぞ。

 

 

養育費と時効の問題点

養育費と時効のケースでは、共通の問題点が見受けられます。

養育費に精通した離婚弁護士が時効の問題点について解説するので参考にされてください。

 

養育費は書面による取り決めがなかった場合は請求できない?

当事務所には、養育費に関する多くの相談が寄せられています。

養育費に関する相談の中で多いのは、「過去の養育費を遡って支払ってもらえますか?」というものです。

養育費について、公正証書など、法的に有効な書面で決めをしていなかった場合は、支払ってもらえる可能性は低くなってしまいます。

時計すなわち、養育費は、法的には書面ではなくとも、口約束であっても、合意が成立し、その合意で定めた額の支払い義務が発生すると考えられます。

しかし、養育費について、適切な合意書を交わさず、口約束で済ませた場合、後々、相手(養育費の支払い義務者)が合意の存在を否定することがあります。

この場合、言った言わないの争いとなり、合意の存在を立証できないため、未払い養育費の請求は認められない可能性があるのです。

 

未払いの養育費は取り決めの内容によって時効の期間が異なる

上述したように、養育費の時効は取り決めの内容によって異なるので、時効管理上、注意が必要です。

養育費の取り決めの内容ごとに時効期間を整理すると下表のとおりとなります。

取り決め内容 将来分の養育費 過去の養育費 備考
合意 5年
(月ごとに時効が進行)
5年
(月ごとに時効が進行)
口頭の合意や不適切な書面は合意の存在が否定される可能性あり。
公正証書 5年
(月ごとに時効が進行)
5年
(月ごとに時効が進行)
調停 5年
(月ごとに時効が進行)
10年間
判決 5年
(月ごとに時効が進行)
10年間

 

 

養育費の時効を中断できるのに中断しない

養育費は、何もしないと時効が進行してしまいますが、実は、この進行を中断することができます。

イメージとしては、ストップウォッチの一時停止ともいえます。

時効中断の方法には、①請求、②差押え、仮差押え又は仮処分、③承認の3つがあります(民法147条)。

また、催告すれば、6ヶ月間時効が中断されます。この催告の場合は、6ヶ月以内に、裁判上の請求や調停の申立て、差押え等をしなければ、時効の中断の効力が生じません(民法153条)。

これらの内容等についてまとめると下表のとおりとなります。

時効中断の種類 内容 具体例
請求 裁判上の請求をいう。
※単なる口頭の請求等は含まれないので注意。
養育費分担調停の申立て

離婚訴訟の提起(附帯処分として養育費の申立て)

差押え、仮差押え又は仮処分 養育費の支払い義務者に対する強制執行 給与の差し押さえなど
承認 養育費の支払い義務者が支払い義務の存在を認めること。 支払い義務を認める書面の作成、誓約書など。
「支払う」など、口頭の場合は立証が問題。
催告 養育費を支払うよう督促する。 内容証明郵便等によって養育費を請求

養育費は、上記の中断措置を取らなければ、時効が進行し、支払ってもらえなくなる可能性が高くなっていきます。

しかし、このような中断措置を知らない方が多いため注意が必要です。

 

 

養育費と時効の3つのポイント

上記の問題点を踏まえて、養育費と時効のポイントについて、解説します。

 

【POINT①】養育費について法的に有効な合意書を作成する

養育費については、トラブルを防止するために、口約束ではなく、法的に有効な合意書を作成すべきです。

必ずしも、公正証書にする必要はありませんが、専門家に助言をもらって適切な書面を作成するようにされてください。

素人判断で、適当な書面を作成すると、合意書としての効力が認められない可能性があるため注意が必要です。

なお、当事務所は、離婚協議書や公正証書についてのサンプル(書き方の見本)をホームページに掲載しており、無料でダウンロード可能です。

弁護士サンプルについてはこちらのページをご覧ください。

ただし、あくまで参考程度にとどめ、離婚の専門弁護士の助言をもらうことをお勧めいています。

 

【POINT②】養育費の時効を中断する

養育費は、時効が進行すると、回収可能性が低下してしまいます。

相手が養育費を支払ってくれない場合、泣き寝入りするのではなく、まずは時効中断の措置をとるべきです。

特に、支払い期が到来してから5年近く経っている場合、時効が完成する可能性が高いため注意が必要です。

また、中断の方法については、上述したとおり、離婚調停のほか、給与の差押えなども可能です。

どの方法が適切かは離婚専門の弁護士に助言をもらとよいでしょう。

 

【POINT③】養育費は時効が完成していても諦める必要はない

養育費は、時効が完成していても、法的には当然に請求できないわけではありません。

すなわち、時効によって、支払い義務を消滅させるためには、養育費の支払い義務者側が時効を援用しなければなりません。

例えば、養育費の支払い期が到来してから5年以上経っていても、相手に養育費を請求し、相手が任意に支払ってくれれば問題はありません。

したがって、時効が完成しているからといって諦める必要はないのです。

 

 

まとめ

養育費の時効が問題となるケースでは、上記のように、専門的知識やノウハウを必要とします。

問題点やポイントについて、一通り解説しましたが、具体的な状況に応じてとるべき戦略は異なります。

そのため、離婚専門の弁護士に具体的な状況を伝えて、適確なアドバイスを受けるようにされてください。

当事務所では、離婚事件チームに所属する弁護士が離婚問題について親身になってご相談に応じております。

ご相談についてはこちらをご覧ください。

 

 


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