単身赴任で別居していた夫が交渉により離婚を成立させた事例

ご相談者Sさん (東京)
職業:会社員
世帯年収:1500万円
婚姻期間:16年
解決方法:協議
子どもなし
離婚を切り出した

相手:40代会社員

※実際の事例を題材としておりますが、事件の特定ができないようにイニシャル及び内容を編集しております。なお、あくまで参考例であり、事案によって解決内容は異なります。

サポート無 サポート有 減額利益
離婚 不成立 成立
慰謝料(解決金) 1000万円 500万円 500万円

 

状況

離婚Sさんは、16年前に妻と結婚しましたが、子どもはできませんでした。

Sさんは、結婚後しばらくして妻から「汚い。」などと言われたため、それを気にし、一切性交渉をしなくなったのです。

そして、結婚生活も形骸化したものとなっていました。当初、福岡で2人で生活していましたが、結婚後5年が経った頃、東京へ転勤することとなりました。

Sさんは、妻との生活を苦痛に感じていたので、離れる良い機会と考え、単身赴任をすることにしました。

Sさんは、別居後数年経った頃、交際相手の女性ができました。そのため、Sさんは、妻と面談し、離婚したいと話しました。しかし、妻は離婚に応じませんでした。

困ったSさんは、今後について弁護士に相談することにしました。

 

弁護士の関わり

弁護士弁護士は、協議離婚の交渉を引き受け、妻に対して、離婚を求める文書を出し、協議を開始しました。ところが、妻は離婚に応じず、また、妻も弁護士を立ててきました。

弁護士は、妻側の弁護士に対して、別居から長期間が成立していることから、仮に裁判になったとしても離婚が認められると主張しました。

これに対して、妻側は、別居ではなくただの単身赴任であったと反論しました。また、その上で、もし、離婚に応じて欲しいのであれば、1000万円を解決金として支払うことを要求してきました。

弁護士は、高額であることを主張し、減額交渉し、500万円を支払うことを条件として離婚を成立させました。

 

補足

離婚訴訟において、裁判所が離婚を認めるのは、民法所定の離婚原因がある場合です。

離婚原因について、くわしくはこちらをごらんください。

本件では、離婚原因のうち、「その他婚姻を継続し難い重大な事由」(民法770条1項5号)に該当するか否かが論点となります。すなわち、別居から相当な期間が経過すると、この事由に該当すると考えられています。

どの程度の期間を持って「相当な期間」かは一概にいえませんが、本件のように、離婚を求める側が異性と交際している場合、有責配偶者と認定されるリスクがあります。有責配偶者の場合、離婚に必要とされる別居期間は長期間となります。

しかし、本件ではSさんが別居してから10年以上が経過していたため、もし、有責配偶者であったとしても、離婚が認められる可能性はありました。

ただ、問題なのは、妻側が別居であることを否定し、ただの単身赴任だったと反論していたことです。

もし、別居ではなく単身赴任と認定されれば、Sさんの離婚は認められない可能性が高い事案でした。

この事例の慰謝料に関する説明は、こちらをごらんください。



 

 

単身赴任で離婚する場合の問題点

単身赴任のケースでは、共通の問題点が見受けられます。

単身赴任の事案に精通した離婚弁護士が離婚の問題点について解説するので参考にされてください。

 

単身赴任と別居との区別は難しい

上述したとおり、別居から一定の期間が経過していると、民法が規定する離婚原因(「その他婚姻を継続し難い重大な事由」民法770条1項5号)に該当しますが、単身赴任の場合はこの離婚原因には該当しないと考えられます。

したがって、離婚裁判においては、単身赴任と認定されるか、それとも別居と認定されるかは、重大な影響を及ぼします。

しかし、単身赴任と別居は、いずれも夫婦が別々に生活しているという点で共通しています。

このように、客観的、外形的な事実は異ならないため、単身赴任と別居をどのように区別するかが問題となります。

例えば、本件のように、夫婦仲が最悪なときに、会社から転勤命令が出て、これ幸いと夫が引っ越す場合、単身赴任なのか、それとも別居なのか微妙といえます。

そして、このようなケースは決して珍しくなく、離婚裁判などでは単身赴任か別居かをめぐって争いとなります。

また、本件のように、相手から、「別居ではなく単身赴任だった」と反論された場合、その立証責任がどちらにあるのかで離婚裁判の勝敗が左右されます。

この場合の立証責任は、離婚を求める側が「別居であった」という事実を立証しなければならないと考えられます。

したがって、もし、別居だということを証明できなければ、夫の離婚請求は認められないこととなります。

 

財産分与にも影響する

単身赴任なのか、それとも別居なのか、という問題は、離婚だけではなく、財産分与にも影響します。

すなわち、財産分与は、夫婦の共有財産を分けるという制度であり、その対象となる財産の基準時については、基本的には別居時であると考えられます。

なぜならば、別居することで、夫婦の経済的な協力関係が失われると考えられるからです。

これに対して、単身赴任は別居とは異なり、夫婦の経済的な協力関係は続いていると考えられます。

したがって、別居ではなく、単身赴任と認定された場合、財産分与の対象となる財産は、離婚時(正確には、離婚裁判の口頭弁論集結時)となります。

例えば、単身赴任開始時に預貯金が100万円だったのが、その後預貯金が増加して離婚時には1000万円になっていたとします。

この場合、単身赴任が別居と認定されれば、財産分与は50万円ですが、もし、別居と認定されなければ、財産分与は500万円となってしまいます。

別居と認定される場合

100万円 ÷ 2 = 50万円

別居と認定されない場合

1000万円 ÷ 2 = 500万円

本件のように、単身赴任の時期が長期間に及べば及ぶほど、財産分与に与える影響は大きくなる傾向です。

 

 

単身赴任の事例の3つのポイント

上記の問題点を踏まえて、単身赴任のケースの離婚のポイントについて、解説します。

 

【POINT①】単身赴任の場合は離婚の意志を明示する

上述したとおり、単身赴任であっても、別居であっても、「夫婦が離れて暮らしている」という外形的な事実は同じです。

したがって、単身赴任ではなく、別居であったと認定してもらうためには、主観的なこと、すなわち、離婚意思が強固であったという事実を立証することがポイントとなります。

そのためには、例えば、引っ越す際に、相手に対して、「離婚を前提に別居する」などの書面を差し出すことが考えられます。

また、この書面は、内容証明郵便の方がよいでしょう。

内容証明郵便というのは、その文書を差し出したということを、郵便局が証明してくれるものです。

なお、配達証明をつけると、相手にいつ到達したかを証明する資料も入手できます。

書留このように、離婚意思が記載された書面を差し出し、それを証明できるようにしておけば、相手から「単身赴任だった」と反論され場合、離婚を前提とした別居であったことを立証できるでしょう。

内容証明郵便については、素人の方でも、利用可能ですが、慣れていないと面倒です。

また、後々証明できるように、適切な内容の書面を作成する必要があるので、弁護士への依頼を検討されるとよいでしょう。

 

【POINT②】別居の主張立証のコツ

「単身赴任の場合は離婚の意志を明示する」は、別居開始のときのポイントですが、本件のように、別居開始のときに、内容証明郵便を出していない場合、どうすればよいかが問題となります。

このような場合でも、別居であったことの間接的な事実を主張し、立証することで、別居であったと認定してもらえる可能性もあります。

例えば、本件では子供がいないのに、10年以上も別々に生活していることです。

通常、単身赴任は、子供がいて転校させるのがかわいそう、自宅を購入しているため自宅を守る必要がある、などの状況で行われるものです。

そのような事情がなければ、夫が転勤する際、妻も一緒についていくはずです。

したがって、離れて生活しなければならない事情がないのに、長期間別々に生活していたという事実を主張することで、単身赴任ではなく別居であったと認定してもらえる可能性があります。

また、例えば、夫が引っ越したあと、自宅にまったく戻ってはいなかった、という事実があれば、別居と認定される可能性があります。

なぜならば、単身赴任であれば、通常、盆や正月などは帰省するはずです。

したがって、転勤が、夫が妻とまったく顔を合わせていないのであれば、別居だったと人制される可能性があります。

 

【POINT③】財産分与のポイント

単身赴任か、別居かが争われる事案では、別居を主張する側は、財産分与の基準時を別居開始時だったと主張するのが基本です。

反対に、単身赴任だったと主張する側は、財産分与の基準時を離婚時と主張するでしょう。

このように、基準時についての双方の主張が異なる場合、離婚裁判では2つの基準時の財産を開示するのがポイントです。

基準時について、争点となっていることを理由として財産を開示しないと、訴訟手続が遅滞してしまい、長期化するおそれがあるからです。

そのため、基準時については、2つの可能性があると考えて、別居開始時と離婚時の財産を開示すべきです。

 

 

まとめ

弁護士小村単身赴任のケースでは、上記のように、主張立証に関して専門的知識やノウハウを必要とします。

問題点やポイントについて、一通り解説しましたが、具体的な状況に応じてとるべき戦略は異なります。

そのため、離婚専門の弁護士に具体的な状況を伝えて、適確なアドバイスを受けるようにされてください。

当事務所では、離婚事件チームに所属する弁護士が離婚問題について親身になってご相談に応じております。

ご相談についてはこちらをご覧ください。

 

 





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