再婚を隠していた元妻への養育費免除を成功させた夫Sさん

執筆者
弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士。
離婚分野に注力し、事務所全体の離婚・男女問題の相談件数は年間700件を超える。(2018年実績)
ご相談者Sさん (福岡県久留米市)
職業:会社員
解決方法:裁判
子どもあり (13歳、12歳)


相手:パート

※実際の事例を題材としておりますが、事件の特定ができないようにイニシャル及び内容を編集しております。なお、あくまで参考例であり、事案によって解決内容は異なります。

依頼前 依頼後 利益
養育費 月額5万円 免除 月額5万円
未払養育費及び慰謝料 300万円 130万円 170万円

 

状況

Sさんと元妻は、平成20年2月に子ども2人(13歳、12歳)の親権者を元妻として、調停離婚しました。

Sさんは、離婚の際、子ども達の養育費について、月額5万円(一人当たり2万5000円)を支払うと約束しました。また、Sさんが不貞行為を行っていたため、慰謝料として総額280万円を支払う旨合意しました。

家族平成20年4月、Sさんは、別の女性と再婚し、その女性の連れ子2人を養子としました。また、平成20年9月、Sさんとその女性との間に子どもが誕生しました。

Sさんは、離婚後、しばらくの間は養育費と慰謝料を合わせて月額8万円を支払ってきました。

しかし、家族が増え、生活が苦しくなり、平成23年9月以降、支払いができない月もありました。

平成26年5月、元妻は突然、弁護士を通じてSさんの給与を差し押さえてきました。元妻によれば、養育費と慰謝料の未払額が合計300万円であるとの主張でした。

給与の差押命令はSさんが勤めていた会社に届きました。Sさんは、社内での印象が悪くなり、出世にも影響すると心配し、弁護士に相談しました。

 

弁護士の関わり

差押命令の当事者目録を見ると、元妻の姓が旧姓ではなく、他の姓となっていました。そこで、弁護士は、元妻の代理人弁護士に対して、再婚の有無や元妻の年収等を照会しました。

ところが、元妻の弁護士は上記照会を無視し、何ら回答しませんでした。

そこで、弁護士は養育費減額調停の申立準備のため、元妻の戸籍謄本を取得したところ、元妻は、他の男性と平成20年8月に再婚し、子ども達を養子縁組していることが判明しました。しかも、この再婚は、離婚した平成20年2月からわずか半年後であり、再婚禁止期間(離婚から半年間)を経てからすぐのものであることが発覚しました。

弁護士弁護士は、養育費減額の審判を申立て、Sさんに養育費の支払い義務が存しないこと、また、未払分についても、再婚していたのであるから支払い義務がないことなどを主張しました。

その結果、将来の養育費の支払いは免除となり、未払い分についても30万円のみを支払うという内容で和解が成立しました(100万円についてはすでに給与の差押えにより支払っていたので、実質的には130万円を支払うという和解。)。

 

補足

養育費については、一度取決めをしても、その後の事情の変更で増減が可能です。相手方(権利者)が再婚し、子どもを再婚相手と養子縁組したような場合は、免除できる可能が大です。

弁護士しかし、免除や減額については、あくまで申し立てたときと考えるのが基本です。たとえ相手方が再婚していたことを知らなくても、後から遡って「払いすぎたから返済してほしい。」という主張は困難です。

本件でも、過去の未払分については、支払い義務が認められた可能性もあります。交渉がうまくいったため、Sさんの経済的利益が大きくなりました。


 

 

養育費と再婚の問題点

養育費を合意した後、再婚する事案においては共通して見られる傾向があります。

ここでは、養育費の合意後の再婚に関して、問題点について解説いたします。

 

問題点① 事情変更の該当正判断が難しい

養育費は、合意成立後、その合意にしたがって支払う必要があります。

しかし、養育費は、長年月にわたって継続的に支払う義務がある特殊なものです。

支払いを継続する中で、合意した額をそのまま支払うことが不当な場合もあります。

そこで、裁判実務は、このような養育費の特殊性に鑑み、「事情の変更」が認められれば、増減することが可能と判断しています。

問題は、この「事情変更」の要件を満たすか否かの判断が明確ではないということです。

基本的には、権利者側(養育費をもらう側)が再婚し、子供を再婚相手の養子に入れた場合、免除が可能と考えられます。

この場合、子供の第1次的な扶養義務は再婚相手が負っており、義務者(養育費を支払う側)の扶養義務は、補助的なものになると考えられるからです。

家族もっとも、再婚相手の所得が少ないなどの事情があれば、なお、養育費の支払い義務が認められる可能性もあります。

このように、具体的な状況によって結論が異なる可能性があるため、養育費に詳しい専門家に相談されることをお勧めします。

なお、当事務所では、養育費の減免について詳しい解説を掲載しています。

養育費の減免について詳しくお知りになりたい方は、こちらをぜひご覧ください。

 

問題点② 養育費を減免する意思表示が必要

手紙養育費の減免が認められる事情の変更があったとしても、養育費を減免するには、その意思表示が必要です。

すなわち、養育費の減免の意思表示としては、「養育費変更の調停申立て」や「内容証明郵便による通知」が考えられます。

もっとも、調停申立ての場合、裁判所を利用するため解決まで長期間を要する可能性があります。

また、内容証明郵便の場合、記載内容に不備があると、減免の効果が認められない可能性があるため、専門家にご相談されることをお勧めいたします。

 

問題点③ 再婚はわからない場合が多い?

悩む女性Sさんの事例のように、再婚の事実はわからない場合が多くあります。

そのため、本来、減免できる養育費を支払い続けるという事案が散見されます。

もちろん、再婚したことを認識した上で、子供のために、あえて養育費を支払い続けるのであれば、問題はありませんし、実際にそのようなケースもあります。

しかし、再婚を隠して後から発覚したような場合、騙されたような気分となり、義務者(養育費を支払う側)としては面白くないはずです。

 

問題点④ 当事者間で話し合いにならない

夫婦喧嘩養育費の減免は、一度決めた養育費を変更するため、権利者側(養育費をもらう側)の理解を得にくいという問題があります。

相手が納得してくれない場合、当事者間での話し合いでの解決は難しいため、養育費の変更の調停を申立てる必要があります。

 

 

養育費の合意後の再婚のポイント

上記の問題点を踏まえて、養育費の合意後の再婚のポイントについて、解説いたします。

POINT①子供との面会交流を充実させる

書留上記のとおり、養育費の減免の意思表示は内容証明郵便を活用することが望ましいです。

また、内容証明郵便を出す際、「配達証明」を合わせて申し込むようにされてください。この配達証明をつけると、いつ、その文書が相手に届いたかを証明する文書を入手することができます。

弁護士は内容証明郵便を活用しますが、素人の方の場合、慣れていないため、内容に不備がないよう注意しなければなりません。

当事務所では、養育費を免除する意思表示のサンプルを公開しているので、無料でダウンロードが可能です。

ダウンロードはこちらからごらんください。

 

POINT②再婚を知るポイント

再婚したら通知する旨の合意

養育費を取り決める際、公正証書を作成したり、調停で成立させることが一般的です。
公正証書や調停条項の中で、「再婚した場合、その事実を通知しなければならない」などの条項を加えておくと、再婚したことを知らなかったという事態を防止できる可能性があります。

子供とのコミュニケーション

再婚時の通知義務は、相手が守らない可能性もあり、万全ではありません。
面会交流を通して子供の状況の変化を感じとってもらうという方法があります。
もちろん、面会交流は、子供の健やかな成長が目的であって、再婚を知るのが目的ではありません。
しかし、継続的にコミュニケーションを取っていれば、およその生活状況は感じることが可能となるでしょう。

 

POINT③第三者に間に入ってもらう

養育費の減免について、相手の理解が得られない場合、最終的には養育費変更の調停を申し立てることとなります。

しかし、解決まで長期間を要する可能性があるため、可能であれば調停手続は避けたいところです。

そのため、当事者だけでの解決が難しい場合、第三者に間に入ってもらうことも検討して良いでしょう。

第三者には、共通の知人や、弁護士、親兄弟などが考えられます。

 

 

執筆者
弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士。
離婚分野に注力し、事務所全体の離婚・男女問題の相談件数は年間700件を超える。(2018年実績)



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